<社説>投票率の低落傾向 民主主義の土台揺るがす


社会
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 投票率の低落傾向に歯止めがかからない。21日に投開票された統一地方選挙・後半戦や衆院補選で顕著な傾向として表れた。自分たちの代表を選ぶ選挙で投票しない人が増えることは、民主主義の土台を揺るがす危機的な状況と言える。強く警鐘を鳴らしたい。

 総務省が22日発表した後半戦の全国の平均投票率は、59市長選挙で47・50%と過去最低を更新した。283市議選45・57%、東京特別区の20区議選42・63%、66町村長選65・23%、282町村議選59・70%と相次いで最低を更新した。
 前半戦も41道府県議選、6政令市長選、17政令市議選で平均投票率が過去最低を記録している。
 町村の議員選挙は住民に身近な分、投票者が有権者の過半数に達するが、市など都市部では過半数を割っている。
 県内でも東村長選挙、玉城デニー氏の知事転出に伴う衆院3区の補欠選挙が行われた。東村長選挙は87・00%と前回を2・14ポイント下回ったが、高率を維持した。しかし3区の補選にいたっては過半数に届かず、43・99%である。県内で実施された国政選挙では過去最低となった。
 補欠選挙は全国的にも投票率が下がる傾向がある。2007年の参院沖縄選挙区補選でも47・81%と過半数を割り込んだ。政権選択が懸かる総選挙ではなく、今回は沖縄と大阪の二つの地域に限られた。沖縄でも公開討論が行われないなど、政策論争が不十分だったことは否めない。
 とはいえ、衆院3区は名護市辺野古への新基地建設が最大の争点だった。国と県が鋭く対峙(たいじ)する中で、対立点は鮮明だったはずだ。
 全国的に選挙の大切さに対する国民の認識が薄れているのではないか。極めて危険な兆候だ。一人でも多くの有権者が投票所に足を運ぶように候補者、政党はできる限り、政策論争を深めていく必要がある。
 振り返れば、戦後沖縄は自治権拡大の戦いの連続だった。米軍占領下の1952年4月に発足した琉球政府の行政主席は任命制だった。公選制導入を求める住民の声は幾たびの米軍の弾圧、懐柔策にめげることなく主席公選を68年11月に実現するに至った。
 主席公選で投票権の大切さを身にしみて実感してから今年で51年になる。当時の人々の切実な思いを忘れてはならない。
 かつて、時の首相が「無党派層には寝ていてほしい」との趣旨の発言をして批判を浴びたことがある。彼が図らずも吐露したように、棄権することは為政者の思うつぼなのである。
 選挙は、このような国民主権を無視した為政者のおごりとも言える言動を、主権者がいさめる機会でもある。
 夏には参院選挙も控えている。一人一人に平等に与えられた大切な一票を、無駄にすることなく、しっかりと行使したい。