<社説>参院選候補出そろう 普天間解決の道筋示して


社会
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 夏の参院選に向け、沖縄選挙区から出馬する主な候補者が出そろった。

 立候補を表明したのは、元琉球大法科大学院教授の高良鉄美氏(65)とシンバホールディングス会長の安里繁信氏(49)の2人である。不出馬を決めた現職の糸数慶子氏(71)の1議席を争う。
 高良氏は糸数氏の後継者として「オール沖縄」陣営から支援を受ける。これに対し、安里氏は自民、公明に維新を加えた「自公維」態勢で臨む。選挙戦は2氏による事実上の一騎打ちとなる見通しで、両方の勢力が、がっぷり四つに組む構図だ。
 最大の争点は、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設の是非である。高良氏は辺野古新基地建設阻止を掲げた。安里氏は6月上旬に予定する政策発表で明言する考えだ。賛否を明確にし、堂々と論争してほしい。
 新基地建設問題の解決法は、普天間飛行場の返還手法とセットである。両陣営には、両方を解決する具体的な道筋を県民の目線で示すことが求められる。というのも、辺野古移設を取り巻く環境は変化しており、具体策の必要性が強まっているからだ。
 一つは、政府が工事を進める中、2月の県民投票で投票者の7割が埋め立て反対の意思を示したことだ。その約2カ月後には、名護市辺野古を含む衆院沖縄3区の補選で、建設に反対する屋良朝博氏が当選した。これらの民意とどう向き合うかが問われる。
 埋め立て区域に軟弱地盤が見つかり、政府が明確な工期を示せていないことも環境の変化として大きい。政府は辺野古移設が唯一の選択肢と繰り返すが、普天間の危険性をその間放置するのか。普天間飛行場を抱える宜野湾市の松川正則市長が訪米し、一日も早い返還を米政府に求めているのは切迫感の表れだ。危険性除去を早期に実現する具体的対応策が求められる。
 2021年度に期限が切れる沖縄振興計画の次の展開も大きな争点の一つとなる。自立型経済の実現に向けて、現振計を検証、総括し沖縄の将来像を描くことは、今後の県民の暮らしを左右する。
 自身が考える最大の争点について安里氏は「ポスト沖縄振興計画」を掲げ「現実味、説得力のある政策」を提示する考えだ。高良氏は憲法9条を含めた改憲の阻止を挙げた。9条を巡る議論は米軍基地や自衛隊基地を多く抱える沖縄の現状に直結する。
 他にも沖縄には子どもの貧困をはじめ、医療・福祉、教育などの分野で問題が山積している。両陣営が今後発表する政策で、これらの問題を解決する具体的なビジョンや施策を提起してほしい。
 対立する立候補予定者と直接意見を戦わす機会を増やし政策論争を深めるべきだ。公開討論会などに積極的に参加し、議論を尽くして有権者に判断材料を多く示すことを期待する。