<社説>プラスチックごみ 排出削減の取り組み急げ


社会
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 プラスチックごみが、世界各地で深刻な環境汚染を引き起こしている。ごみの処理促進と併せて、プラスチックの使用を大幅に減らすための対策を急がなければならない。

 スイス・ジュネーブで5月上旬、有害な廃棄物の国際的な移動を規制するバーゼル条約の締約国会議があり、汚れたプラごみを輸出入の規制対象に加える条約改正案が採択された。プラごみによる海洋汚染に歯止めをかけることが目的だ。国際的な法規制は初めてであり、意義深い。
 改正案は日本とノルウェーが共同提出した。昨年6月の先進7カ国首脳会議では日本と米国は海のプラごみ削減の数値目標文書に署名せず、批判されていた。日本は、国民1人当たりのプラごみ排出量が米に次いで世界第2位でもある。条約改正の提案国として今後は対策推進に責任を負わなければならない。
 汚れたプラごみが輸出入の規制対象になった背景には、最大輸入国だった中国が昨年1月にプラごみなどの輸入を禁止したことがある。行き場を失ったプラごみは各地であふれており、中国に代わる輸出先と目された東南アジアも規制を強化している。
 マレーシアは、日米など少なくとも7カ国からプラごみが不法に輸入されたとして計3千トンを送り返すと発表した。同国の環境相はプラごみの不法処理で大気や水の汚染が深刻化していると指摘し「マレーシアは世界のごみ捨て場にはならない」と訴えた。
 フィリピンは、カナダの業者が輸出し放置していた大量のごみ入りコンテナを貨物船でカナダ向けに送り出した。カナダの対応の遅さに激怒したドゥテルテ比大統領は、ごみを引き取らないなら「戦争する」と語った。プラごみが外交問題にも発展している事態を重く受け止めたい。
 日本政府は5月末にプラごみの海洋流入を減らすための行動計画をまとめた。国内のプラごみ大幅削減を目指す資源循環戦略と、海岸漂着ごみ対策の新たな基本方針も決定した。6月末に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会合では、「2050年に海への流出をゼロにする」との目標への合意を目指すという。
 だが足元はおぼつかない。ごみの大幅削減に向けた産業界との調整を含む国内態勢の整備は進まず、レジ袋有料化の義務付け、ペットボトルやストローへの新素材導入などの取り組みも遅れている。政府は主導権を発揮すべきだ。
 近隣諸国からの漂着物が多い沖縄にとって、プラごみ問題はとりわけ深刻だ。海を漂う間に壊れてできる微小なマイクロプラスチックが県内各地の沿岸から高密度で検出されている。海洋生物や人体への影響も懸念される。
 プラごみ対策は喫緊の課題であると同時に、各国の協調が不可欠なテーマである。プラスチック製品に頼らない生活を志向しつつ、国際社会の議論を注視したい。