<社説>朝鮮戦争勃発69年 終結に向け環境づくりを


社会
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 1950年に北朝鮮と韓国が朝鮮半島の主権を巡り衝突した朝鮮戦争の勃発から25日で69年となる。

 東西冷戦を背景に、西側自由主義陣営諸国を中心とした国連軍と東側諸国の支援を受ける中国人民義勇軍が参戦し、3年間の戦争で数百万人の死傷者を出した。
 国連軍と北朝鮮人民軍、中国人民義勇軍の3者は53年に休戦協定に署名し休戦に至った。終戦はいまだ実現せず、平和条約も締結されていない。北緯38度線付近は軍事境界線として残り、朝鮮半島の民族の分断は続いたままだ。
 朝鮮戦争には東西のイデオロギー対立が色濃く反映された。しかし89年のベルリンの壁崩壊などにより東西冷戦は終結した。冷戦の遺物でもある朝鮮戦争の完全な終結は、当時戦争に関わった米国、ロシア(旧ソ連)、中国などにも責任がある。世界的な課題だ。
 冷戦崩壊後も、北朝鮮がミサイル開発や核実験を繰り返すなど、緊張が高まった時期があった。しかし近年は米朝首脳会談が実現し、北朝鮮が「完全な非核化」を約束したほか、昨年は南北首脳が「朝鮮半島を恒久的な平和地帯とする」とした共同宣言を発表した。今月には中国の習近平国家主席が北朝鮮を訪れ、朝鮮半島情勢を好転させるために金正恩委員長と会談した。
 これらの動きを止めてはならない。日本も含めた関係国は北東アジアの新たな平和秩序を築くためにも、さらなる努力を続け、取り組みを加速させてほしい。
 朝鮮半島の恒久平和の実現は、沖縄の過重な米軍基地負担の軽減にもつながる。沖縄の米軍基地は、常に朝鮮半島の危機と連動して存在してきた。在沖海兵隊は絶えず朝鮮半島情勢に注目し、有事に備えている。緊張が高まった際には激しい訓練を繰り返してきた経緯がある。
 名護市辺野古の新基地建設計画も、朝鮮半島に海兵隊を投入する米軍のシナリオの延長線上に位置付けられる。
 さらに、嘉手納基地や普天間飛行場、ホワイトビーチ地区といった米軍基地は朝鮮戦争で使用される国連軍基地でもある。朝鮮戦争が終結すれば、在沖米軍基地は国連軍基地ではなくなり、北朝鮮の攻撃対象から外れるだけでなく、在沖米軍基地の存在価値を低下させる。そうなると政府が「抑止力の維持」を理由に進める辺野古新基地建設の名分も説得力を失う。
 今、北朝鮮と韓国の当事国をはじめ、米国、中国、ロシア、日本などの関係国も、「脅威」や「緊張」を前提とした朝鮮半島政策を転換する時機に来ている。対話によって紛争の火種を除去する外交戦略こそが求められている。
 それによって南北の融和を一層深め、朝鮮戦争終結宣言や平和協定締結を実現する環境をつくるべきだ。日本政府による辺野古新基地建設は、そんな環境づくりに逆行する愚策と言うほかない。