<社説>沖縄修学旅行減少 体験学習で魅力生かそう


社会
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 沖縄を訪れた修学旅行生の数が2年連続で減少した。県は少子化の影響を挙げるが、学校数も減ったことは気になる。沖縄を選ぶ学校が減ったとも読み取れるからだ。

 沖縄では平和学習や自然環境学習、さらにさまざまな体験型学習ができる。修学旅行先としてうってつけだ。
 沖縄観光全体から見れば、夏場以外の閑散期に客数が確保でき、若年層が沖縄を訪れることで今後のリピーター客となることも期待できる。沖縄ファンを増やすためにも官民挙げて修学旅行の誘致に取り組みたい。
 2018年の沖縄への修学旅行は、学校数が対前年比20校(0・8%)減の2455校、人数は同2910人(0・7%)減の42万9224人だった。少子化で人数が減ることはかねて予想されていたが、学校数も減った。
 県内への修学旅行誘致は閑散期対策として1980年ごろから始まった。沖縄観光は夏場の7~8月がトップシーズンで、冬場との客数に大きな差があるためにホテルや観光施設はコスト高になり、正規雇用を抑制するなどの傾向があった。中学生が3年生の1学期(4~6月)、高校生が2年生の2学期(9~11月)に行われていた修学旅行を誘致することによって、閑散期の春・冬期との客数の差を詰め、平準化が期待された。
 当時、首都圏の公立校の修学旅行は航空機を使用できず、長野県などへのスキー旅行が主流だったという。関係者が要請を重ね、92年に首都圏の公立高校が航空機使用を解禁してから、沖縄への修学旅行は急増した。以降、05年に初めて40万人を突破し、おおむね2500校、40~45万人で推移してきた。
 戦跡や米軍基地を巡る平和学習など沖縄での修学旅行の教育効果は認められてきたが、さらに魅力となったのは民家宿泊(民泊)だ。一般の家庭に滞在し、地元の人たちと触れ合いながら農漁業、沖縄の文化などを学ぶ。
 18年の実績を見ても読谷村が290校、伊江村が257校となっており、地域を挙げて民泊に取り組んできた自治体が着実に受け入れ数を確保している。
 県などは、地域に密着した民泊修学旅行がリピーターの増加にも貢献していると見る。海外への修学旅行が解禁され、国内外の旅行先との価格競争にさらされながらも、沖縄に根強い人気があるのは体験型学習のメニューの豊富さにある。
 県は修学旅行を呼び込むため、事前・事後学習のアドバイザー派遣や説明会の開催などに引き続き取り組む考えだ。さらに新たな体験型メニューなどを増やして、子どもたちの教育ニーズに応えたい。沖縄の航空路線は機材の小型化が進み、大型校は分散して搭乗することになる。これが学校の負担感や費用の割高感につながらないような方策も求められる。