教育基本法改正案・愛国は強制するものでない

 与党は教育基本法改正協議会で、改正案を正式に決定した。焦点だった「愛国心」の表現は「我が国と郷土を愛する態度」になった。前文には「公共の精神」などの文言を新たに盛り込み、「公」重視の姿勢を打ち出している。
 教育基本法の改正案がまとまるのは1947年の同法制定以来、初めてだ。案通りに改正されたら、戦前の国家主義の反省を基に「個人の尊厳」「個人の価値」を中心にした現行法の基本理念が大きく変わることになる。
 60年前の反省は忘れ去られたのだろうか。そもそも、国を愛するのを法律で求めるのはふさわしくない。愛するのは、優れて個人の内面の領域の問題だ。国が強制するのはおかしい。ナショナリズムをかき立てる動きで危うい。
 国による心の統制は、憲法が保障している思想、良心の自由を侵害することにならないか。
 改正は、2000年、当時の森喜朗首相の私的諮問機関・教育改革国民会議が、伝統や文化の尊重、家庭、国家などの視点から基本法の見直しを提言したことから大きく動きだした。中央教育審議会(中教審)は03年の答申で、新たな理念として「郷土や国を愛する心」や「家庭教育」を明記した。
 自民党は「国を愛する心」を主張したが、公明党は「国を大切にする心」を主張した。与党合意案は双方が歩み寄った形だ。ただ、愛する「心」や大切にする「心」でなく、「態度」に表現を変えたとしても、懸念はぬぐえない。
 教育現場では、02年に福岡市の小学校で愛国心を通知表で評価していることが表面化した。
 国旗・国歌法が制定される際も、当時の小渕恵三首相は「強制するものではない」と国会で答弁したにもかかわらず、学校現場では国歌斉唱のときに起立させられることがある。現に、東京都立高校の定時制に通っていた石川弘太郎さんは、ことしの卒業式を前に学校側から君が代斉唱時に起立するよう要請された。要請は計3回あったという。教育現場では強制が強まることを心配する声が強い。
 改正されたら、通知表で「愛国心」に対する評価を求めたり、国歌斉唱・国旗掲揚の強制が強まるのではないか。懸念は消えない。
 自民党の改憲案でも、国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支える責務をもつことが強調されている。個人より国家に重きを置いている。改憲の動きと教育基本法改正の動きは連動している。
 沖縄は多数の住民が犠牲になった戦争体験をした。「愛国心」を植え付ける動きには「戦前の歩みを連想させる」と警戒したり、批判したりする人が多い。
 法律で「愛国」を求めるべきではない。