国が上告断念 被爆者の立場で救済急げ

 原爆症認定集団訴訟で原告全員を原爆症と認定した仙台、大阪両高裁の判決について国は5日、上告を断念し、受け入れる方針を固めた。地裁判決などを含め、国は既に同様の訴訟で8連敗している。上告断念は当然だろう。

 国は今年4月、原爆症の認定条件を大幅に緩和した新しい基準による認定審査を始めたが、それまでの判決で原爆放射線との因果関係が認められている甲状腺機能低下症などが積極認定の対象から外れ、依然として範囲を極めて狭く絞り込む方針を貫いている。
 両判決がこのまま確定すれば、その意義は大きい。両判決は国の認定範囲を突き崩し、甲状腺機能低下症や貧血なども原爆症と認定し、幅広い判断を示している。しかも国の認定却下処分について「個別的事情を軽視した結果」(大阪高裁)と批判しているからである。
 国の新基準には「被爆者救済の立場に立つ」と明記されている。しかし現状はどうか。国の認定審査と高裁などの判決とを比べれば、どちらが被爆者救済の立場にあるか明白である。
 全国原告・弁護団の代表は6日の会見で、全国において係争中の他の裁判も早期に終結させるよう求めた。上告断念だけでは全面解決につながらないという主張だ。彼らの願いは「原告全員の認定」である。
 与党のプロジェクトチームは原告全員の認定に消極的だが、舛添要一厚生労働相は救済対象の拡大を示唆した。全国原告団長は「すでに50人近くの原告が亡くなった」と訴えており、問題の解決は急を要する。
 仙台高裁判決は「援護法制定の経緯や同法前文に示された救済の精神に照らすと、いささか柔軟な対応に欠けていた」と批判した。その通りだろう。
 国はいま一度、被爆者救済の立場に立つという姿勢を再確認してほしい。次々原告が亡くなるという現実を見れば、残された時間に猶予はない。司法判断を尊重し、柔軟に幅広く認定判断する方針決定を急ぐべきだ。