共謀罪新設・市民生活への影響恐れる

 犯罪行為を話し合っただけで罪とされる「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の衆院法務委員会での採決が当初の4月28日から見送られた。与党側は次回の参考人質疑後に採決を求めるものとみられ、同法改正はヤマ場を迎える。
 与党側は採決を急ぐ構えだが、共謀罪新設を柱とする同法改正には、日本弁護士連合会や市民団体も反対を表明している。これほど強い反対や不安の声がある中、十分な論議もせずに採決を急ぐのは容認できない。政府は共謀罪そのものについて再考すべきだ。
 2000年11月の国連総会で、テロや麻薬、銃器などが絡む組織犯罪を防止するための国連国際組織犯罪条約が採択され、日本も署名。これを受け、国内法整備を目的に共謀罪新設を柱にした組織犯罪処罰法改正案が提案された。これまで二度、国会に提出されたが、いずれも廃案となっている。
 テロや麻薬売買などの国際的な組織犯罪を取り締まるには国際的な取り組みが必要であることは理解できる。
 法務省は国民の一般の社会生活上での行為が処罰の対象になることはない、としている。しかし、法案を見てみると、本当にそうなのか、不安の方が先に立つ。
 殺人や強盗でも、これまでは予備的な準備行為があって初めて犯罪として認定されたが、共謀罪は準備行為がなくとも「合意」だけで犯罪とされる。
 しかも、殺人や強盗だけでなく、適用されるのはほとんどの主要犯罪で、500以上にも上る。その中には、国際的な組織犯罪とは関係のないものまで含まれる。
 摘発対象についても、テロ集団や暴力団などの組織犯罪集団と規定しておらず、定義はあいまいだ。捜査権の乱用や行き過ぎにもつながりかねない。市民団体などが不安視し、反対するのは当然だろう。「合意」だけで処罰の対象とするのは憲法の基本的人権の尊重にも抵触するのではないか。
 政府、与党は早期の成立を目指しているが、問題点についての明確な説明はない。そうであるのならば廃案とすべきだ。