靖国神社参拝 政治家の歴史認識を問う

 靖国神社とは何か。ことしも現職閣僚をはじめ小泉純一郎元首相、安倍晋三前首相らが、終戦記念日に参拝した。

 「公式参拝」は違憲の判決もある。政教分離(憲法20条)や玉串料など宗教組織への公金支出の禁止(同89条)などが、その論拠となっている。
 憲法違反の疑いがあっても、閣僚たちは靖国参拝を行う。そこに、日本の保守政治家の歴史観や価値観が垣間見える。
 戦後、首相として終戦記念日に靖国神社を参拝したのは、三木武夫、中曽根康弘、そして小泉純一郎の3氏である。
 いずれも中国や韓国を中心に「過去の軍国主義を美化するもの」などの反発を買った。
 2001年8月の小泉元首相の参拝は、「靖国公式参拝訴訟」として福岡地裁に提訴された。
 司法は「参拝は公的な性格で、憲法が禁ずる宗教活動に当たる」と、違憲判決を出している。
 それでも当時の小泉首相は「国のために尊い犠牲になった方々に対する追悼は自然なこと」と、参拝を続け、中国の反日感情を刺激して、日中関係を冷え込ませた。
 米国に次ぐ最大の貿易相手国に成長した中国との関係悪化にたまらず、06年5月には経済同友会が小泉首相に参拝中止を提言したほどだ。
 外務省は、首相の靖国参拝を「過去の植民地支配と侵略を正当化しようとするものではない」と釈明したが、アジアの懸念を打ち消すには不十分だった。
 靖国参拝問題には、もう一つ「A級戦犯合祀」問題もある。
 1978年、極東国際軍事裁判(東京裁判)で侵略戦争の責任を問われた東条英機元首相ら14人が靖国神社に合祀された。
 戦後数年ごとに靖国参拝を続けていた昭和天皇も合祀に不快感を示したとされ、75年を最後に合祀後は現天皇も含め参拝を中止している。参拝を続ける閣僚、政治家らはA級戦犯合祀問題をどう受け止めているのか。
 今年は靖国神社を舞台にしたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」が、国会議員や右翼団体の抗議で上映が中止になるなど、表現の自由とも絡んで波紋を広げた。
 福田康夫首相は、近隣諸国への配慮から参拝を控えた。しかし、保岡興治法相、太田誠一農相、野田聖子消費者行政担当相ら閣僚が参拝している。
 靖国参拝問題は、日本の政治家にとって侵略戦争に対する歴史認識を問う「踏み絵」の感すらある。
 福田首相はアジア諸国の信頼を損なうことがないよう、A級戦犯分祀や宗教色のない新追悼施設の建設など、抜本的な解決に前向きに取り組む時期に来ている。