密約文書消失 意図的な廃棄なかったか

 日米密約問題の外務省調査で、関連文書が多数消失しているという耳を疑うような状況が判明した。あってはならないことだ。
 「関連文書が破棄された」との省内情報もあるという。密約を隠ぺいする意図的な廃棄であれば証拠隠滅にほかならない。国民の知る権利、国民主権を侵害するものだ。厳正な対処を求めたい。

 鳩山政権下の密約調査では、有識者委員会が米軍による核持ち込みや朝鮮有事の際の日本からの出撃、沖縄返還時の米軍用地補償費の日本側肩代わりなど4密約を調査中だ。
 密約に関する日米首脳の秘密議事録などの文書が主に米側で確認され、元政府高官の証言などからも密約の存在は明らかだ。
 核持ち込みの密約により、日本の国是である非核三原則がないがしろにされ、米軍核搭載艦船の日本領海への通過・寄港が行われた可能性がある。
 沖縄返還をめぐり、米軍が支払うべき米軍用地の原状回復費用約400万ドル、米側放送中継局のVOA(ボイス・オブ・アメリカ)の海外移転費用1600万ドルを日本側が負担し、国民に多大な不利益を及ぼした疑いがある。
 このような安全保障、財政上の重要な事柄が密約で覆い隠され国民を欺く手段となっていた。それが米側の資料で明らかになりながら、外務省にあるべき文書が見つからないというのである。
 なぜ、文書が消失したのか。歴代政権は密約を否定してきた。国民から事実を隠すために廃棄された疑いをぬぐえない。
 2001年の情報公開法施行の前に廃棄されたとの外務省内情報があるとされる。事実であれば国民を欺く犯罪行為に等しい。保管規定に照らし消失、廃棄行為の責任の追及、処罰を求めたい。
 旧厚生省の薬害エイズ問題でも資料隠ぺいやずさんな文書管理が問題となった。都合の悪い文書が破棄されることがないよう省庁任せでない文書管理機能が必要だ。
 沖縄返還後の沖縄への核再持ち込み密約文書を佐藤栄作元首相の遺族が保管していたことも判明した。国政、外交の重要文書が消失・廃棄され、個人の私物のごとく扱われるようでは民主国家とは言えない。
 密約問題と文書消失問題は表裏一体である。国民主権を担保する文書管理と公開の在り方を問い直したい。