知事選に機密費 事実なら民主主義冒とく

 1998年11月の県知事選をめぐり、当時の小渕内閣で官房副長官を務めていた鈴木宗男衆院議員(新党大地代表)が、自民党推薦の稲嶺恵一氏の陣営に内閣官房機密費3億円が渡っていたと証言した。
 米軍普天間飛行場の県内移設を容認していた稲嶺氏が、県内移設に反対した現職の大田昌秀氏を破り、初当選した選挙だった。

 これまで、鈴木氏は一部メディアに対して3億円の拠出を聞いていたと話していた。本紙の取材に対し、金額の根拠について、当時の野中広務官房長官の秘書官を問い詰め、具体的に確認したと初めて明らかにした。当事者しか知り得ない内幕が含まれた証言である。
 事実とすれば、当時の自民党政権が国民の血税からなる官房機密費を使って、政府の意に沿う候補者を勝たせるために巨額の選挙資金を与えていたことになる。
 沖縄の最大懸案である普天間飛行場の県内移設が争点となった知事選挙が金まみれの露骨な介入を受けていたことになる。地方自治と民主主義の根幹をないがしろにした行為と断じるしかない。
 鈴木氏の証言に対し、野中氏は原則として選挙には機密費を拠出しないと否定している。当時の大田県政打倒に向け、県内保守政界と密接なつながりを持っていた野中氏と鈴木氏の証言の食い違いに、国民の預かり知らないところで領収書なしで支出される機密費の闇の深さがうかがえる。
 機密費の使途は最近、徐々に明らかにされてきた。野中氏は県内での講演で、長官在任中に複数の政治評論家に機密費から盆と暮れに500万円ずつの付け届けをし、国会対策費などにも使ったと明かしていた。
 県内は、11月に普天間飛行場の返還・移設問題で15年間揺れ続けた沖縄の民意をはっきりさせる県知事選挙を控えている。また、9月の統一地方選挙で、移設が焦点となる名護市議選挙もある。
 政権の主は民主党に代わったが、沖縄に新たな巨大基地を押し付ける政権の姿は変わらない。使途が公開されない官房機密費を政権の意のままに使われる懸念はぬぐえない。
 沖縄は政治決戦の秋を迎える。地方主権を掲げる民主党政権が、金の力で選挙と民主主義をゆがめる悪弊を重ねることがあってはならない。