強まる基地重圧/政治的無人島ではない 民意無視が「敵意」招く

 抱え切れないほどの重い荷物を持たされている人に、もっと持ってほしいとお願いしても限界がある。嫌がる人に「仲良くしたいから」と言って押し掛けても、逆効果しか生み出さない。
 ここ数日の基地絡みの動きをみると、沖縄の民意にはお構いなしの米軍にはこんな常識が通用しないということが鮮明になった。

◆普天間の爆音増確実
 米空軍嘉手納基地は、10月から始まる補修工事で、2本ある滑走路のうち1本が順次使えなくなるとして、1年半の間、所属機が緊急時には海兵隊普天間飛行場を使うと発表した。
 滑走路改修工事は2012年3月まで実施される予定だ。22日にあったダイバート(目的地変更)訓練では、嘉手納基地の航空管制を担う要員や整備兵らが参加し、普天間に着陸したばかりのF15戦闘機に整備兵が駆け寄る様子が確認されている。
 地上要員まで動員し、万全の態勢を敷いたところに、普天間基地使用が恒常化する可能性の濃いことが透けて見える。
 米軍戦闘機の操縦士は練度を維持するため、搭乗回数や訓練時間が義務付けられており、飛行回数を減らすことはできない。
 危険性が指摘される、普天間飛行場はその返還・移設問題が日米間の最大懸案であり続けるが、今回の嘉手納所属機群の追加使用によって、騒音被害など、周辺住民に及ぶ負担が増大することは火を見るより明らかだ。到底容認できるものではない。
 普天間飛行場の騒音は7月の爆音訴訟の控訴審判決で、違法状態と認定されたばかりである。
 判決は、一審で認めなかったヘリコプター特有の低周波音による被害を認め、賠償額も一審から2・5倍に引き上げた。米国内なら建造物があることが許されない「クリアゾーン」が設定されていない点にも触れ、「世界一危険な飛行場」と異例の言及をした。
 危険と過重な負担を背負い続ける普天間に、平然と1年半も負担を増やす神経が分からない。
 空軍と海兵隊の主力航空基地が約10キロ圏内で近接する基地の島の異常さを逆手に取った、安易な負担の横滑りと言うしかない。
 加えて、嘉手納では、外来機のFA18戦闘攻撃機が世界的に使用禁止が広がるクラスター爆弾20発を投下した訓練をしたことも確認され、地元の不安と反発を高めている。
 滑走路改修で運用に支障が出るならば、県内で代替措置を取るのではなく、本国の基地に戦闘機を戻せばよいではないか。
 米本国内では運用できない不適格な普天間に、主力のジェット戦闘機を降ろして負担と危険を増幅させる。基地運用の二重基準はあまりにもひどすぎるが、日米政府は「米本国以外は適用されない」として取り合わず、基地被害に苦しむ住民に背を向けたままだ。

◆軍事目的の寄港明白
 一方、宮古島市では、米海軍佐世保基地の掃海艦が「友好親善」を名目に、県や宮古島市の自粛要請を押し切って入港した。
 米軍艦の県内寄港は、2007年6月の与那国、09年4月の石垣港に続き本土復帰後、3度目となるが、ここ3年余に集中し、いずれも機雷除去が任務の掃海艦である点に軍事的意図が潜んでいる。
 市民団体の抗議の声が響く中、グリーン在沖米総領事は「最近はソマリアや東シナ海、南シナ海、朝鮮半島で緊張が高まる中、航海自由の原則が大切だ」と意義を強調して見せた。
 内戦が収まらないソマリアや核開発を進める北朝鮮、領有権をめぐって日中のあつれきが強まる尖閣諸島を抱える東シナ海の情勢を挙げ、総領事は宮古島への寄港を正当化した。
 親善は名ばかりで、目的は膨張する中国海軍の動きなどをにらみ、先島での軍事的な存在感誇示にあると認めたようなものだ。
 普天間使用と掃海艦寄港に共通するのは、きな臭い米軍の軍事優先の動きであり、警戒と反発を強める沖縄の民意には無視を決め込む構図である。
 139万県民が暮らす沖縄は政治的無人島ではない。
 民意を無視した傍若無人な米軍の立ち居振る舞いは、県民の米軍基地に対する視線をとげとげしくし、「敵意」に囲まれた基地と化す可能性を高めるものだ。米軍はそれを自覚すべきだ。