チリ鉱山救出 「希望」がつないだ全員生還

 「希望」が「生還」の現実になった瞬間、歓喜が世界中を包んだ。
 チリ北部のコピアポ郊外の鉱山落盤事故は、13日深夜(日本時間14日午前)、地中に閉じ込められていた33人の作業員全員が、無事救出された。
 8月5日の事故発生から69日目。当初は全員の生存が絶望視されたが、鉱山労働で鍛えられた強靱(きょうじん)な精神力と体力、強固な結束力と優れたリーダーなど、さまざまな幸運に恵まれ、奇跡の生還を果たした。

 現地語でエスペランサ、日本語の「希望」という言葉が救出劇のキーワードだった。
 チリ経済を支える銅山は、世界シェアの4割を占め、日本も銅の総輸入の4割をチリに依存する。
 国家の経済を支えているという誇りもあるであろう。まさに九死に一生を得たような最悪の事態にもかかわらず、救出劇の主役となった鉱山作業員たちの表情は、誰もが底抜けに明るかった。
 「生還を一度も疑ったことはなかった」「助けてくれると分かっていた」「チリのプロフェッショナルたちを信頼していた」と、絶望のふちでも希望を捨てないことの大切さを世界に力強く語った。
 父や夫、兄、弟らの生還を願い、信じて鉱山上のキャンプ村「エスペランサ」で、69日間も待ち続けてきた家族の深く強いきずなも、世界中を感動させた。
 家族や地域の信頼、つながりが希薄化する「無縁社会」化が進む日本だからだろうか。
 それにしても世は情報化社会だ。救出劇は、世界に同時中継され、世界中がわがことのようにかたずをのんで救出作業を見守った。「地球家族」を実感した。
 空調もなく気温30度、高温多湿、不十分な水と備蓄食料、地下約700メートルの閉鎖空間での長期滞在を支えたのが宇宙ステーションなどの閉鎖空間で宇宙飛行士の長期滞在を支える米航空宇宙局(NASA)のノウハウだった。
 救出トンネルの掘削や救出カプセルの開発、精神面でのケアなど救出作業のあらゆる分野で人類の英知が発揮された。
 奇跡の救出劇の後で思うのは落盤事故の原因と再発防止だ。
 「労働環境には変化が必要だ」と救出された労働者は語っている。救出に国家の威信を懸けたチリ政府のみならず落盤事故の払底に世界中の英知を集め、発揮したい。