新防衛大綱 ソフトパワーこそ必要だ

 政府は新たな「防衛計画の大綱」と中期防衛力整備計画を決めた。
 これまで防衛政策の基本に据えてきた専守防衛を実質的に放棄して「動的防衛力」という新たな概念を盛り込んだ。「戦う自衛隊」への変貌(へんぼう)を意味する。

 国民的な議論を十分尽くさないまま、安全保障の基本姿勢を変更したことになる。このような民主党政権の政策決定のやり方は、将来に禍根を残す結果を招きかねない。
 新大綱は南西諸島を含む島しょ部の防衛力強化を打ち出した。
 空自那覇基地はF15戦闘機を1・5倍に増やし、海自は南西地域の警戒監視に向け潜水艦やヘリコプター搭載護衛艦を整備。陸自は与那国、宮古、石垣島と想定される地域へ部隊配備する。
 一方で民主党がマニフェスト(政権公約)に掲げた日米地位協定の改定については触れていない。負担軽減の具体策は見あたらない。沖縄にとって米軍基地の負担軽減どころか、自衛隊の配備強化でますます過重な負担がのしかかることになる。
 新大綱は「我が国の存立を脅かすような本格的な侵略事態が生起する可能性は低い」と指摘している。にもかかわらず、日米同盟を「深化・発展させる」と記述し、情報、周辺事態、弾道ミサイル防衛などで協力を強化する。シーレーン(海上交通路)確保や宇宙、サイバー分野、気候変動分野の連携も盛り込んだ。
 何のために米軍と一体化するのだろうか。逆に周辺国は日本への警戒を強め、軍事力を増強する可能性が高まるだろう。米国への協力を強化すればするほど、自国ではなく同盟国の戦争に巻き込まれるリスクは増大する。「安全保障のジレンマ」に陥っている。
 武器輸出禁止措置を講じている武器輸出三原則の見直しに含みを持たせた。自衛隊の国連平和維持活動(PKO)への派遣条件を定めたPKO参加5原則を見直す可能性にも触れている。原則のなし崩しは危険だ。
 新大綱はハードパワー(軍事力)については盛り込まれているが、科学技術や文化、外交力を使って相手を引き寄せるソフトパワーについてはほとんど触れていない。むしろ「平和国家」というソフトパワーを減らしている。
 軍事力をいかに使うのかではなく、戦わずして相手を魅了する方法こそ研究すべきだ。