周辺事態法 “派兵”につながる危険な改悪

 政府は、自衛隊の対米支援の範囲を公海へ拡大する周辺事態法改正の検討に入った。これまでの海外「派遣」から「派兵」につながりかねない危険な動きだ。
 自衛隊が米軍の戦闘の後方支援として物資を補給する行為は、兵たん活動の一環にほかならないだろう。国際法上の一般的な解釈からしても、武力行使との一体化に当たる。

 これまで政府は「極東の平和と安全のために出動する米軍と一体をなすような行動をして補給業務をすることは、憲法上違法」(1959年、内閣法制局長答弁)という見解を示してきた。
 憲法違反との批判をかわすため、周辺事態法制定の際に「後方地域」という用語を編み出した。
 「後方地域」は戦闘が行われていない地域であり、当該地域での米軍支援は武力行使の一体化に当たらないと説明してきた。
 例えば水、燃料、食糧などの補給活動は戦闘地域に当たらない日本領海に限定した。しかし今回の法改正は、補給活動を日本周辺の公海まで広げる。
 もはや武力行使の一体化ではないと言い逃れできまい。集団的自衛権の行使を禁じた憲法9条に抵触する可能性が高い。
 周辺事態法の適用範囲を広げていけば、台湾海峡有事での同法適用を警戒する中国を刺激しかねない。
 菅政権は、日本の軍事力の増大に歯止めをかけてきた平和憲法の精神と専守防衛の国是をほごにするつもりだろうか。
 菅直人首相の私的諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」は昨年8月、集団的自衛権の憲法解釈や武器輸出三原則の見直し、自衛隊海外派遣のための恒久法制定などを求めた。
 今回の周辺事態法改正は、米側の要望に加え、懇談会報告の内容を先取りしたようにも映る。
 朝鮮半島情勢の緊迫化を持ち出しては、国民に説明なく平和国家の柱をなし崩しにする政治手法は危険だ。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設が県と名護市の反対によりほぼ不可能なため、周辺事態への協力姿勢を示すことで「日米同盟の深化」のアピールを狙っているとしたら、姑息(こそく)と言うしかない。
 米国の顔色をうかがいながら決める外交・安全保障政策はアジアの近隣諸国に信頼されない。東アジア共同体構想の実現こそ、政府が取り組む重要政策ではないか。