鳥島射爆撃場移転 島を外国に売り渡すのか

 防衛省は久米島町の鳥島射爆撃場で行われている米軍の実弾射撃訓練を、同町の硫黄鳥島へ移転することを検討している。
 同省案は新たな訓練施設の提供であり、負担軽減に逆行する負担増だ。県内移設どころか町内移設にすぎない。問題解決に程遠い。
 この案が沖縄政策協議会の基地負担軽減部会で示されたというから理解に苦しむ。これでは「負担増加部会」と言われても仕方がない。

 鳥島射爆撃場は、米軍が沖縄を占領した1945年から自由使用されてきた。在沖米軍基地の使用条件を定めた日米合意文書「5・15メモ」によって、沖縄の日本復帰後も自由使用状態が続いている。
 5・15メモは、復帰後も沖縄の米軍基地を、限りなく自由使用させることを約束した文書だ。対米追従の姿を映し出している。
 例えば、鳥島の使用条件は「2000ポンドを超えないすべての航空機用の在来型弾薬」と記されているが、米国内でも制限されている劣化ウラン弾が過去に使用された。国際的に非難されているクラスター爆弾投下も取り沙汰されている。
 環境対策も杜撰(ずさん)だ。5・15メモに「爆発物処理が実施される」とあるが、実際には「廃弾処理が義務付けられているわけではない」(外務省)。米軍機による漁船の操業妨害や船舶への誤射など安全が脅かされてきた。
 65年以上にわたる訓練で島の形はすっかり変わり、水没の危険が懸念されているほどだ。硫黄鳥島への移転は問題の先送りにすぎない。いずれ鳥島と同様破壊し尽くされてしまう。島を消耗品のように取り扱う移転案などあり得ない。
 硫黄鳥島は硫黄の産地として知られ、かつて琉球王国から中国への朝貢品となった。固有の植物群落があり、温泉が湧き出ることから将来、観光に活用できよう。
 県内唯一の活火山の島なので地熱発電が可能だろうし、風力、太陽光などと組み合わせた次世代エネルギーのモデルになる可能性もある。クリーンエネルギーを使って海水を淡水化すれば水の心配もいらない。
 久米島町議会が指摘する「宝の島」を実弾射撃で蹂躙(じゅうりん)し、将来性を奪うことは許されない。
 政府に求められるのは、新たな国土の“売り渡し”ではない。独立国として当然発揮されるべき外交交渉によって、鳥島射爆撃場を閉鎖し無条件で返還させることだ。