普天間移設再検討 閉鎖・撤去へかじを切れ/新閣僚で最善選択を

 米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設する現行計画見直しの動きが加速する可能性が出てきた。次期米国防長官に指名されたパネッタ中央情報局長官が米議会の公聴会で証言し、現行計画を再検討し、計画通りに進めるかについて就任後に判断する考えを示した。

 枝野幸男官房長官ら関係閣僚は「日米合意を見直すものではない」と打ち消しに躍起だが、本人に真意を確認せずに断言できる理由は何か。県内移設に反対する県民世論の高まりなど移設計画の実現が困難となっている現実や、米国の変化の兆しに目をつぶるのはなぜか。思考を停止せずに、議会証言を普天間返還問題の再考に向けた出発点と受け止めるべきだ。

抑止力論理の破綻
 7月1日に国防長官に就任予定のパネッタ氏の発言は、日米両政府による現行計画を「非現実的」とし、嘉手納基地統合案を主張するレビン上院軍事委員長の質問に答えたものだ。レビン氏の「費用が掛かりすぎる再編計画の見直しに協力するか」との問いに、パネッタ氏は「最善の方法は何かを判断するため、(議会と)ともに取り組む」と述べた。
 米議会でのこうしたやりとりの背景には、米国が直面する深刻な財政危機がある。2011会計年度(10年10月~11年9月)の財政赤字は1兆6451億ドル(約132兆円)と過去最大に拡大し、3年連続で1兆ドルを突破。オバマ大統領は今年4月、23年までに財政赤字を4兆ドル(約320兆円)減らす方針を表明した。これまで聖域化されていた軍事費も含まれ、4千億ドル(約32兆円)が削減される。在沖基地を含むアジアや欧州の駐留米軍の縮小や軍用機調達の見直しなどの検討が進むとみられる。膨大な出費を伴うグアム移転を含めた普天間問題に目が向くのは当然の成り行きだろう。
 そうした中、今月下旬に開かれる外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、現行計画の辺野古移設を目指す方針を確認する予定という。これは余計なお世話だ。
 ゲーツ米国防長官は今月末での退任が決まっており、退陣表明をした菅直人首相が任命した両大臣も同様の立場にある。2プラス2は日米の新たな閣僚で開くのが筋だ。パネッタ氏は普天間見直しを示唆しており、なおさらだ。
 防衛省は2プラス2をにらみ、普天間の辺野古移設を正当化するため、小冊子「在日米軍・海兵隊の意義及び役割」を作成した。海兵隊を含む在沖米軍が沖縄に駐留する根拠を説明しようと試みるが、防衛省OBで元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は抑止力などについて「論理的な整合性がない」と論理の破綻を指摘。県は「沖縄駐留を前提としており、他の都道府県との比較がない」などと真っ向から反論し、3項目13カ所にわたって疑問点を突き付けた。県民を納得させ切れないのは、政府の説明が「方便」である証左だ。

片務的構造見直しを
 普天間移設に関連して県内でも不可解な動きがあった。住民の一部が地域振興などを条件に普天間の受け入れを表明している国頭村安波区は10日の区民総会で、受け入れの可否を問う投票を行い、賛成が75票で反対の50票を上回った。区は多数決を受け、政府交渉に入る予定だが、肝心の国は「行政の長(国頭村長)が反対し、承認がない案をとやかく論評しない」(北沢俊美防衛相)と冷ややかだ。
 区民の賛否が割れたことからも明らかだが、区の提案は、過疎化が進む集落で助け合って暮らしていた地域住民を分断し無用なあつれきを招いている。安波案は下地幹郎国民新党幹事長が日米両政府に提起し深く関わっている。
 区の移設容認は推進派の思惑を飛び越えて、「沖縄は振興策次第で基地を受け入れる」という誤ったメッセージを国内外に発信しかねない。影響の大きさを理解しているのだろうか。
 あらためて明確にしておきたい。沖縄の圧倒的な民意は普天間の県外移設と過重な基地負担の目に見える軽減だ。地政学的重要性だけを理由に、日米安保の負担を押し付ける差別的な構造を根本から見直す必要がある。辺野古案はもとより、安波案やレビン氏が提起する嘉手納統合案など県内移設は論外だ。日米両政府は普天間の県外・国外移設、閉鎖・撤去など最善の選択を目指し、仕切り直すべきだ。