米軍と自治体協力 国会無視した官僚の先走り

 災害時を想定した米軍と地方自治体の協力が、国会でのまともな検証さえなく強化されようとしている。強い違和感を覚える。
 日米両政府は21日に開催予定の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、東日本大震災での米軍の救援活動「トモダチ作戦」を踏まえ、米軍と地方自治体の災害時の協力推進に合意する方針だ。
 自治体の防災計画に米軍の支援を明記することなどが浮上している。

 「トモダチ作戦」に対する評価があるにしても、自治体側から米軍との協力強化まで求める声は聞こえない。十分な国会論議もなく外務・防衛官僚が先走る同盟強化の在り方は、国防の文民統制の観点からも見過ごせない。
 朝鮮半島有事などを想定した周辺事態が起きた際に、民間空港や港を出撃や物資補給拠点とする米軍の行動を自治体に下支えさせるきな臭い思惑があることは明白だ。
 1万6千人を投入した前例のない米軍の震災救援は(1)自衛隊・米軍の統合運用(2)米軍による民間空港・港湾の使用(3)被災地への上陸による物資搬入―に拡大した。
 米軍は横田基地にトモダチ作戦の「統合支援部隊」を設け、初めて陸海空と海兵隊の4軍を一元指揮した。1997年の日米ガイドラインで合意した「日米共同調整所」は防衛省など3カ所に置いた。
 周辺事態法が想定する「武力攻撃事態」の有事対応が、大震災で試されたのである。その延長線上にある自治体と米軍の協力強化は、周辺事態をにらんだ国民協力体制確立の動きであり、危うさを感じる。
 震災復興資金が増大し、防衛費が抑制されれば、米軍が直接中国軍の監視などに臨まねばならなくなる。震災の早期復興は米国にとっても有益であることを押さえなければ、本質を見失う。
 米政府の「トモダチ作戦」の予算は最大で8千万ドル(約65億円)。一方、日本側は米軍への思いやり予算を2011年度から5年度で各1881億円負担する。「思いやり予算を震災復興へ」という主張は同作戦の前にかき消されてしまった。
 善意だけで実行されたわけでなく、トモダチ作戦は、米国の利益に直結している。
 トモダチ作戦の「成果」を盾に沖縄の土地、海、空を自由使用する米軍の実態が日本全土に波及しないか心配だ。主権国家としてそれでいいのか。国民的議論が必要だ。