障害者虐待防止法 「障壁」根絶は社会の責務

 障がいのある人の尊厳と権利を擁護し、偏見や差別、虐待をなくすことは、私たちの社会全体に課せられた責務だ。
 障がい者虐待を発見した人に自治体への通報などを義務付ける障害者虐待防止法案が参院本会議で全会一致で可決、成立した。
 以前から福祉施設などで障がい者に対して「しつけ」「指導」という名目で日常的に虐待が繰り返されているとの指摘があった。

 判断能力に支障があり被害を受けていることを認知できず、自ら被害を訴え出ることもできない障がい者は多いという。虐待が表面化するのは氷山の一角にすぎない。
 法成立を虐待根絶に向けた第一歩としたい。
 同法では、家族など養護者、福祉施設職員、企業などの使用者の「暴行や不当な身体拘束」「性的虐待」「暴言を吐くなどの心理的虐待」などを障がい者虐待と定義している。
 虐待の通報を義務付けたほか、通報した施設職員や同僚らが解雇など不当な扱いを受けないよう保護する規定も設けた。各市町村には通報先として「障害者虐待防止センター」の設置を求めている。
 来年10月に施行予定だ。各市町村は取り組みの強化を急ぎたい。障がい者が当然の権利を行使できる環境をつくるため「障害者の権利条例」の早期制定も不可欠だ。
 虐待防止には、家族など養護者、施設職員らの意識改革が何より必要だ。体罰などを伴う「しつけ」「指導」は、権利侵害、虐待に当たるという認識を徹底させたい。
 施設職員のスキルアップのための研修などの充実も不可欠だ。職員間でなれ合いが生じると、虐待を抑止する力が働かなくなる。職員の仕事は「人権擁護」であると強く認識する必要がある。
 防止法が制定されるということは、図らずも虐待が日常化していることの証左だ。法律によらなければ虐待を防止できない社会に、自分たちがいることを忘れてはならない。
 法律ができても、障がい者に対する一人一人の支援の心、権利擁護の意識がないと、共に生きる社会の実現は難しい。
 社会、心の中に存在する障壁(バリアー)をなくしていく努力を社会全体で進めていくべきだ。法成立を私たち自身の意識を変え、自治体や市民らの活動を活発にさせる機会にしたい。