与那国陸自駐屯 民意無視は許されない

 防衛省が陸上自衛隊の駐屯地建設のため与那国町有地を取得する方針という。賛否が二分する中で取得するのはあまりに強引と言うほかない。拙速に過ぎる。
 昨年決まった新防衛大綱、中期防衛力整備計画で防衛省は島しょ防衛強化をうたい、5年以内に与那国、宮古、石垣へ陸自の部隊を配備すると打ち出した。

 町有地取得の方針もその一環だ。配備先は島の西端に近い「南牧場」で、約125ヘクタールの牧場のうち15~20ヘクタールを駐屯地とし、4年以内に隊舎やヘリポートを整備する計画という。
 大綱策定の前年に与那国町の町長、町議会議長が連名で配備を要望したことが伏線になった。むしろ、大綱に盛り込むために町に要望を促した勢力があったと見るべきだろう。政治的意図を感じる。
 その与那国で、自衛隊誘致賛成の署名数は514人だが、反対の署名は535人に上っている。町が7月に開いた住民説明会でも反対の意見が相次いだ。その説明会には防衛省職員も出席した。反対の強さを同省が知らないことはあり得ない。
 今回の計画で、牧場の土地の大半が町有地である点に防衛省が目を付けたであろうことは想像に難くない。町長が推進派だから、反対があったにしても用地取得が可能と踏んだのだろう。
 そこには、拙速に物事を進めると将来に禍根を残すという謙虚な思慮が見当たらない。まして、駐屯の是非を民意に委ねようという姿勢はみじんもない。むしろ、造ってしまえばもう撤去はできまいという計算すら見え隠れする。
 島しょ防衛強化は、軍事費膨張に頭を悩ます米国が日本に肩代わりを求めたのが発端だ。そこで防衛省は中国脅威論をあおり、配備の環境を整えようとしている。
 町の自衛隊誘致は「島の活性化」が目的だが、陸海空の自衛隊基地がある対馬(長崎)は1960年に約7万人だった人口が今では約3万5千人に減った。全国を見ても、自衛隊に頼って実現した活性化など存在しない。台湾との交流を通じた与那国独自の活性化策も水の泡となる。
 今からでも遅くない。町は要望を撤回すべきだ。少なくとも、沖縄の歴史に照らしてみた駐屯の帰結、将来への影響、活性化の根拠などについて議論を尽くし、住民投票に諮ってほしい。防衛省はそれまで作業を中断すべきだ。