中川文科相発言 「木を見て森を見ず」では

 八重山地域の公民教科書採択をめぐる問題で、中川正春文部科学相が「残念だが協議は整っていない」などと述べ、全教育委員による協議は不成立との認識を示した。

 各教育委員会で採択した教科書が異なった場合、一本化する詳細規定はない。県教育庁は、文科省との調整を踏まえて一本化に向け混乱収拾に取り組んだ。「ここではしごが外されるとは」という言葉が驚きと困惑を象徴している。
 この期に及んで「不成立」との認識なら、文科省には一本化に向けた道筋を示す義務がある。
 教科書採択は戦前の国定教科書の反省を踏まえ、学校ごとに選んでいた。教科書無償化措置法が成立し、1965年から無償化に合わせて広域採択制度が導入され、同一地区は同じ教科書となった。
 同一地区に複数市町村がある場合は協議会を置いて選定。一方で教科書を採択する権限は市町村教委が持つが、これまで一本化で問題になることはあまりなかった。
 しかし、「新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書が検定を通ってからは予想される事態ではあった。平和主義や基本的人権などについて、従来の教科書とは異なる表記が目立つからだ。今回の問題は、文科省がこの不備を放置してきた結果による混乱とみていい。
 問題が大きくなってからも、混乱収拾のための合意形成方法や、再協議の際に有効な採択に成り得るためにどうすればいいのかなど、文科省は言及していない。不作為、怠慢を指摘されても仕方ない。
 文科相は、全教育委員による協議の不成立に言及する前に、教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)の運営の在り方こそ検証すべきだ。役員会を経ずに調査員を任命したり、教科書への順位付けを廃止したり、協議委員も入れ替えた。
 従来の採択方法のどこに問題があったかなど十分な説明はなかった。法律にのっとり「開かれた採択」だったのか。一連の過程で瑕疵(かし)はなかったか。独断的な運営をたださなければ「木を見て森を見ず」と言わざるを得ない。
 住民が選定過程に異議を唱えたのも政治的な動きではない。協議会に対し、公正な手続きと説明責任を求めたまでだ。文科省はそれを踏まえた上で、県教育庁や市町村教委に向き合い、今回の問題に対し説明責任を果たすべきだ。