文科省通知 越権行為も甚だしい/沖縄の自治力を示そう

 地方教育行政への国による介入であり、重大な問題をはらむ。八重山教科書問題をめぐる文部科学省の15日の通知のことである。
 通知は事実上、竹富町教育委員会に採択教科書の変更を求めているとも受け取れる。
 判断変更を求めるのなら、国による介入以外の何物でもない。この介入が許されるのならば、地方教育行政法は無きに等しい。自治の精神に真っ向から対立する行為だ。文科省には、事の重大性をよく認識してもらいたい。

翻った態度
 経過を振り返る。石垣・竹富・与那国3市町の教育委員会の諮問機関・八重山採択地区協議会(玉津博克会長)は8月23日、公民の教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版を選び、3市町教委に答申した。
 玉津会長が選定手法を大幅変更した上での選定だった。その一つ「順位付け廃止」は、「『1種絞り込み』を禁じた県教委の通知に違反している」というのが廃止の理由だったが、協議会で、従来も1種絞り込みは行われていないと反論が出ると、玉津氏は「ノーコメント」と説明を避けた。
 教科書を読み込んで推薦する調査員は、協議会の規定で「役員会で選任」となっていたが、役員会を経ず玉津氏が独断で選定した。
 その後、石垣・与那国両市町教委は答申通り採択したが、竹富町教委は育鵬社版を不採択とし東京書籍版を選んだ。
 このため、3市町教委は9月8日に地区内全教育委員による協議を行い、育鵬社版を不採択とし、東京書籍版を採択した。
 この間、県教育庁は文科省の助言を基に協議の進め方などを3市町教委に助言してきた。
 だが13日になって文科省が態度を翻す。中川正春大臣は8日の採択について「協議が整っていない」との認識を示し、森裕子副大臣は「文科省が認めているのは8月23日の答申」と述べた。
 文科省はさらに、県教育庁に対し、採択地区協議会の「結果に基づき」、同一の教科書を採択するよう3市町への指導を求めた。
 8日の結果は認めず、23日の結果を有効として一本化を求めるのだから、事実上、育鵬社版採択を求めるに等しい。
 地方教育行政法は教科書採択権が市町村教委にあると定める。竹富町教委の決定はそれに基づく。
 一方、地区内の教科書一本化を求める教科書無償措置法はあくまで国の財政措置の要件を定める法だ。それを基に、国が竹富町教委に判断を変えろと求めるのは、越権も甚だしい。
 そもそも、教科書に関する「執行権」を法が明記している市町村教委の判断より、「答申」する諮問機関にすぎない採択地区協の判断を優先すべきだという根拠は何なのか。理解に苦しむ。

国と地方は対等
 2000年の地方自治法改正で、国と地方自治体の関係は対等ということになった。国の通知などは、単なる技術的助言という位置付けだ。
 市町村教委が採択する教科書をめぐり、国が、特定の教科書を選定しなければ補助負担金を支出しない、というのであれば、改正地方自治法の精神に反する。県教育庁は、国地方係争処理委員会に持ち込んで争っていい。
 文科省がこうした論点を把握していないとは思えない。通知が県教育庁の「指導を求める」内容で、自ら「指導」していないのはそのためだ。8日の採択について「整っていない」との表現にとどめ、「無効」としていないのも、市町村教委の判断の重さを知るからだろう。今後、自治を阻害しない判断をするよう期待したい。
 県教育庁は16日、あらためて3市町教委に一本化を求めた。8日の協議は有効という認識だが、文科省の通知を受け、もう一度、3市町教育委員による協議が行われる見通しだ。文科省の不当とも思える通知にめげず、あくまで合議で一本化を目指す姿勢は高く評価したい。
 現在、3市町教委の間はもとより、石垣、与那国両市町教委の内部でも意見が割れている。
 一連の問題は、地方教育行政法と教科書無償措置法の矛盾を明るみに出した。県教育庁も3市町教委も、法の不備を乗り越えて粘り強い議論、「熟議」を展開し、一本化を成し遂げ、沖縄の自治能力の高さを示してほしい。