日米首脳会談 民意否定して民主主義か

 これほど中身の乏しい会談は、過去にあまり記憶がない。指導者としての情熱や展望が感じられず、官僚の振り付け通り言葉を躍らせただけではないか。

 野田佳彦首相とオバマ米大統領の日米首脳会談で、首相は米軍普天間飛行場について「日米合意に基づき推進する」と述べ、名護市辺野古への移設をあらためて約束。大統領は「結果を求める時期が近づいている」と応じ、具体的な進展への日本側の努力を求めた。
 鳩山、菅両政権の時代から首脳会談のたびに「日米合意の推進」をことさら強調する日本側の対応は、首をかしげざるを得ない。
 辺野古移設案は県民の支持を全く得られず、さらに米議会の支持も失った。現実主義者を自認する政治家や官僚など「安保マフィア」と言われる人々は、自らが「非現実主義者」化している現実に気付かないのだろうか。
 日米同盟関係について、首相は「日本外交の基軸と考えていたが、大震災後、信念はさらに揺るぎないものになった」と強調したが、肝心なのは日米関係が幅広い国民の信頼に裏打ちされているかだ。
 首相は、国民の間で賛否が割れる環太平洋連携協定(TPP)への日本の参加について「早期に結論を出す」と明言したが、まともな国会論議も国民的議論もなく、合意形成とは程遠い状況だ。
 にもかかわらず、口先で揺るぎない関係を演出し、国民の政治への信頼、政局そのものを揺るがしては、しゃれにもならない。
 首相の「信念」発言に呼応し、大統領は「同盟を21世紀にふさわしいものに近代化していきたい」としたが、真意が定かでない。
 前原誠司政調会長ら民主党政権の実力者から憲法が禁じる集団的自衛権の行使に絡む、前のめりの発言も散見されるが、これをもって、大統領がもし「同盟の近代化」を期待するのなら早合点だ。集団的自衛権の行使を認める国民合意は日本に存在しないからだ。
 辺野古移設については、仲井真弘多知事をはじめ大多数の県民が反対し「実現不可能」と考えている。この期に及んでなお首相や外務官僚が米側に期待感を抱かせる発言を繰り返すのは罪深い。
 民主主義の価値観を共有する日米両国による民意の否定は、国際社会に自らの恥をさらすに等しい。いい加減、自覚してもいいころだ。