世界自然遺産 障壁越え今度こそ推薦を

 特色ある豊かな生態系は沖縄のみならず、人類全体の資産だ。政府にはこれを守る義務がある。
 環境省が本島北部(やんばる)と西表島、奄美大島、徳之島の4島を世界自然遺産の推薦対象地域にすることを検討している。貴重な生物種の多さを考えれば、推薦は当然だ。一刻も早く推薦してもらいたい。

 環境省と林野庁の検討会は2003年、奄美・琉球諸島を北海道の知床、東京都の小笠原諸島とともに世界自然遺産の国内候補地に選定した。
 知床は05年、小笠原も今年6月に遺産登録された。ところが琉球諸島は推薦が見送られてきた。厳しい自然保護の措置がなされていない、というのが理由だ。
 登録には、国立・国定公園の「特別保護地区」設定といった措置が必須だ。だが、やんばるは、ヤンバルクイナなど絶滅危惧種がいるにもかかわらず、こうした保護規制がかかっていない。
 広大な米軍基地が存在し、国内法の適用が及ばないことも大きな難点となってきた。
 このため環境省は昨年、39年ぶりに国立・国定公園の指定を見直し、やんばると慶良間諸島沿岸海域を国立公園の新規候補に挙げた。さらに、国立公園ではあるが、島の一部が未指定の西表島を、「拡張が必要な地域」とした。
 国連環境計画(UNEP)の試算によると、森林消失による経済損失は世界全体で年最大4・5兆ドルに上る。だが、その1%に当たる年450億ドルを自然保護に投じれば、生態系から得られる利益は年5兆ドルにも達する。
 生物多様性は一度失われれば元には戻らない。国立公園化に向けた住民の合意は今後の作業だが、環境省はこうした効果を丁寧に説明し、合意を取り付けてほしい。
 もう一つの難点である米軍基地にも抜本的な対策が必要だ。
 そもそも、自国の領土なのに国内法が適用されないことが間違っている。昼寝のために飛行を禁じる欧州の基地ではあり得ない主権侵害だ。
 国内法の不適用、すなわち米軍による基地の「排他的管理権」は、不平等条約そのものである日米地位協定に由来する。
 政府は一刻も早く地位協定を改定し、在沖米軍基地に環境関連法令を適用させるべきだ。その上で今度こそ世界自然遺産登録にこぎ着けてもらいたい。