安保研究組織 軍事偏重に修正迫る気概を

 安全保障に関する研究や情報収集する課が来年4月、県庁内に発足する。米軍普天間飛行場返還を含む安全保障問題を多角的に研究し改善を目指す、仲井真県政の積極的姿勢の表れとして期待したい。
 最優先課題は、知事公約の普天間飛行場の「県外移設」をどう実現するかだ。1996年の日米合意以来、進展のない普天間返還問題を解決すべく、専門家、市民の英知を新設組織に結集したい。

 新しい課は知事公室内に置き、既存の基地対策課と返還問題対策課とは別に創設し、複数の職員を配置。知事が同時始動を目指す安保問題研究機関とも連携する。
 仲井真知事はこれまで「大規模自然災害対応と危機管理、新型インフルエンザ侵入の研究など、狭義の防衛問題に限らず自らの生命財産を守るため打てる手は打ちたい」との考えを示している。
 知事は研究対象を米国防政策やアジア太平洋の安全保障環境の把握にとどめず、重層的な安保戦略をイメージしている。ならば、国連やアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連機関誘致など大胆な構想も描いてはどうだろうか。
 最初の“土俵づくり”が肝心だ。新組織の目的は何か。短中期的には普天間飛行場や県が目標とする嘉手納飛行場より南の基地の段階的返還であり、長期的には県民の究極的願いである「基地のない平和で豊かな沖縄」の実現であろう。
 冷戦後、安全保障の概念は多様化している。一口に「安保」といっても、軍事力を前面に押し出すリアリズム(現実主義)や国際協調を重視するリベラリズム、人間の安全保障など、論者によってさまざまなアプローチ方法がある。
 どのような安保観の組み合わせが「基地のない沖縄」の実現に有益か。国際政治や平和学、非政府組織(NGO)など専門家の知見も参考に戦略を練り上げてほしい。
 沖縄戦を教訓に恒久平和を希求する沖縄に新組織が設置されるからには、軍事偏重かつ民意を顧みない国主導の安保政策に修正を加える気概を持ってほしい。米軍絡みの事件・事故、犯罪が後を絶たない現実こそ直視し、変化を促す強い意志と構想力を期待したい。
 当然ながら、県が沖縄21世紀ビジョンで掲げる「心豊かで、安全・安心に暮らせる島」「世界に開かれた交流と共生の島」などの将来像実現の一翼も担うべきだ。