八ツ場ダム 政権担当能力はあるのか

 マニフェスト(政権公約)が骨抜きになっている。残るのは政治不信だけではないか。
 民主党は、マニフェストの目玉で「無駄な公共事業の象徴」としてきた八ツ場(やんば)ダムの建設再開を決めた。政権交代直後に一度は中止しながら、迷走した末の現行計画回帰だ。

 この間、治水、利水、コスト面から国土交通省関東地方整備局が八ツ場ダム計画を検証。「ダム建設が代替案より有利」との検証結果を示し、有識者会議が「適切」とお墨付きを与えた。
 しかし、検証の進め方は大いに疑問だ。事業主体の国交省が作業をリードし、洪水や水需要の想定も事業者側が立てる。中立であるべき有識者会議のメンバーを国交省が選び、会議は非公開だった。
 検証経過にも疑問が残る。第1に洪水を防ぐ治水の点から、根拠となる利根川流量の目標値が過大に設定されている、との指摘に十分答えたか。森林の保水力が増した点の検討も不十分だとの批判もある。
 第2に利水の点から、水の需要予測が古いデータに基づいている、との指摘に的確に答えたか。第3にコスト面。現行案はすでに約8割の事業を終えているため、河川改修などの代替案を一から始めるよりも「建設継続」のほうが安上がりになるのは当然だった。
 経過をたどれば、最初からダム建設が前提だと勘ぐられても仕方あるまい。検証手法は民主党が批判してきた「官僚任せ」そのものだ。仮に現行計画回帰が地元に歓迎されたとしても、透明性を欠き、説明責任を果たしていない政策決定の在り方は異様だ。国民は是非を、客観的に判断のしようがない。
 民主党は「コンクリート」(公共事業)から人々の暮らしに税金の使い道を変えると主張してきた。八ツ場ダム建設再開で、大型公共工事見直し路線は修正された。
 県外を公約しながら結局県内移設に回帰した米軍普天間飛行場問題、子ども手当、高速道路無料化、議員定数削減など公約が次々と廃止、凍結、先送りされている。その一方で政権公約になかった消費税増税が現実味を帯びる。野田佳彦首相は来年3月までに関連法案を国会提出する方針だ。
 民主党の政権公約がくるくる変わるたびに翻弄(ほんろう)されるのは国民だ。公約違反、国民への背信行為が後を絶たず、もはや政権担当能力に疑問符を付けざるを得ない。