32軍壕記述削除 事実の明記は県の責務

 明確な資料がない、反対の証言もあるなどとして、沖縄戦の実相を伝える重要な文言、記述を一方的に削除するとは安易過ぎる。
 旧日本軍沖縄守備隊・第32軍司令部壕の第1坑道入り口付近に設置予定の壕説明板について、県は説明板設置検討委員会がまとめた説明文から「慰安婦」という文言と、日本軍による住民虐殺に関する記述を削除することを決めた。

 検討委は昨年11月、壕構築の経緯、壕内に女性軍属・慰安婦が雑居していたことや、壕周辺で日本軍にスパイ視された住民が殺害されたことなどを記した説明文を県に報告していた。
 だが、県は「明確に慰安婦がいたことを証明する文献、書類がない」「虐殺があったという証言と、なかったという証言の両方があり不確か」などの理由で、削除を決めた。仲井真弘多知事は県議会で撤回しない考えを示している。
 報告した委員会側との協議もなしに、削除を決めるやり方は乱暴過ぎるのではないか。
 説明板は第32軍壕があることを知らせ、それが構築された背景や経緯、壕の存在が首里城爆撃につながったという歴史的事実だけでなく、守るのは住民でなかったという「軍隊の本質」を示す事実も記すべきだ。
 壕内に慰安婦がいたことや周辺で住民虐殺があったことの証言、資料は数多くある。県が勝手に削除することは研究者、多くの県民にとって、これまでの世代を超えた継承や研究成果を踏みにじられるもので、怒るのも当然だ。
 沖縄戦の本質を伝えるためには、慰安婦や住民虐殺の問題を欠くわけにはいかない。
 そのためにも県は委員会を再び開いて「慰安婦」「住民虐殺」がどんな資料、証言に基づいたものかを一つ一つ丁寧に検証、確認する必要がある。
 その上で、事実は事実として説明板に掲載すべきだ。仮に「政治的な配慮」をするあまり、沖縄戦の本質に関わる記述を薄めたり、骨抜きにしたりしては説明板の意義が損なわれる。
 沖縄戦を正確に後世へ継承することは行政、研究者ら全ての関係者に課せられた使命だ。その努力を怠ることがあってはならない。過去に正しく向き合ってこそ、平和な未来が切り開けるはずだ。沖縄戦の教訓、事実を後世に伝え続けることは、県民一人一人の責務であることを忘れてはならない。