野田首相初来県 許されぬ差別構造の放置

 就任後初めて来県した野田佳彦首相が、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を堅持する方針を仲井真弘多知事に伝えた。沖縄の民意を顧みず、基地集中の差別構造を維持・推進する政治家が首相の座にあるのは不幸としか言いようがない。

 普天間飛行場について首相は「固定化させず負担軽減を具体的に進める」と述べる一方で「日米両政府は辺野古移設が唯一、有効と確認しながら進めている」と説明した。言い換えれば「固定化回避の方法は県内移設しかない」ということだ。
 首相は「抑止力を維持する」とも述べた。海兵隊が沖縄にいなければ抑止力が弱まると主張する見解を無批判に受け入れている。これこそ最大の誤りだ。
 戦後、海兵隊が駐留していたのは沖縄ではなく本土だった。反基地運動の高まりを受け、1950年代半ばに第3海兵師団が岐阜、山梨などから移ってきた。米軍施政下にあった沖縄なら、米国の意のままに基地を建設できたからだ。政治的判断が主な理由だ。沖縄はサンフランシスコ講和条約によって日本から切り離されていた。
 首相が言う地理的優位性は、その気になれば、沖縄以外のどの地域でも沖縄と同程度に見いだせる。何とも都合のいい言葉だ。
 政府は、在日米軍再編見直しをめぐり在沖海兵隊の一部を米軍岩国基地(山口県岩国市)に移したいと米側から打診されたが、地元の意向を尊重し、拒否することを決めた。山口県民も沖縄県民も同じ日本国民だ。ならばどうして沖縄の民意には耳を傾けないのか。
 県内移設に対しては、仲井真知事だけでなく、稲嶺恵一前知事、大田昌秀元知事も反対の立場を鮮明にしている。稲嶺進名護市長の拒否姿勢は揺るぎない。
 政府の選択肢としては(1)辺野古移設の不調を理由に「普天間」を固定化させる(2)固定化回避の名の下に移設を強行する(3)知事の要望を踏まえ、県外・国外移設に舵(かじ)を切る―の三つが考えられる。現状固定化と移設強行はどちらも県民の願いを踏みにじる暴挙だ。県外・国外への移設や無条件返還を粘り強く訴え、阻止しなければならない。
 今後、政府が一部の事大主義勢力を巻き込んで仲井真知事に受け入れを迫ってくる可能性もある。知事は県民の意を体し、毅然(きぜん)とした態度で政府と向き合ってほしい。