移設工事「先取り」 膨大な無駄遣いはやめよ

 米軍普天間飛行場の辺野古移設に関連し、キャンプ・シュワブ陸上部分で政府が次々と工事を実施している実態が明らかになった。
 移設が妥当なのかどうか、県や有識者が検討しているさなか、移設を前提にした工事を進めたことになる。これではまるで「県の判断は要らない」と宣言するようなものだ。環境影響評価(アセスメント)を審議する専門家に対しても「意見を聴く意思はない」と言うに等しい。

 地方自治の精神を踏みにじる行為だ。これで民主主義国家と言えるのか。野田佳彦首相は施政方針演説で「沖縄の皆様の声に真摯(しんし)に耳を傾ける」と述べた。この言葉が本当なら、せめてアセス手続きが終了するまで、一切の工事を凍結するのが筋であろう。
 辺野古移設を前提にした関連事業は、在日米軍再編に関する2006年の日米合意以降、189件、総額212億円に上る。
 このうち36件は民主党政権発足後だ。政権発足当時、北沢俊美防衛相(当時)は、県外移設を掲げて選挙戦を戦ったこととの整合性を問われ、「自民政権の時に契約した工事」と弁解していたが、その後も次々と発注していたことになる。
 これらは管理棟や隊舎の建設などで、普天間のヘリ部隊移転を前提にした工事だ。アセスの結論を待たずに既成事実をつくり、受け入れを迫る意図だとみるのは、あながちうがち過ぎでもあるまい。
 これらを受注した企業に防衛省OBが天下っていたことも分かった。天下りはアセス評価書作成事業でも確認されている。過去3年間に受注した全ての会社で、だ。辺野古の事業は海でも陸でも「天下りだらけ」と言うほかない。
 客観的に見れば、辺野古移設はもはや不可能、との見立ては政府内でも主流になりつつある。それなら、200億円を超す膨大な事業費は海に捨てるようなものだ。
 莫大(ばくだい)な借金を抱える今の政府に、こんな無駄遣いをする余裕があるのか。そんな予算があるのなら、震災の復旧・復興を急ぐべきだ。あるいは、原発をめぐる政府の誤った方針で苦難を強いられた福島県民への補償に充てるべきだ。
 いずれ断念する事業のため、天下りのいる会社への発注に国費を投じるのは、「官僚の老後対策」そのものだ。民主党は「官僚支配打破」の原点に戻ってもらいたい。