全原発停止 再稼働なき安定供給追求を

 日本の商業用原発50基のうち、唯一稼働していた北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が5日深夜、定期検査のために停止した。稼働原発がゼロになるのは1970年以来、42年ぶりとなる。

 東京電力福島第1原発事故から約1年2カ月。原発の安全神話は完全に崩壊したが、政府のエネルギー政策は原発依存体質から抜け出せないでいる。結果として国民の不安は一向に解消されず、政府や電力会社への信頼は失われたままだ。稼働原発ゼロの事態は当然の帰結と言える。
 政府は全原発停止を回避するため、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を目指していたが、安全対策への疑念などから、滋賀県や京都府など隣接する周辺自治体が反発。関電の筆頭株主である大阪市の橋下徹市長も政府批判を強めている。
 野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら関係3閣僚が、原発の再稼働に関する新たな安全基準を決定したのが4月6日。首相が新基準作成を指示してからわずか3日後だった。さらに首相らは同13日、新基準に照らして大飯原発の再稼働を「妥当」と判断した。
 独立性が高く、安全対策を専門的かつ客観的に担う原子力規制庁の発足のめどは依然立たず、再稼働に同意が必要な地元の線引きも棚上げされたままだ。「再稼働ありきの拙速なやり方」との批判が出るのはもっともなことだ。
 一方、原発ゼロが想定されていたにもかかわらず、電力の安定供給に向けた取り組みは後手後手に回っている。沖縄電力を除く電力9社の需給予測は、このまま原発が再稼働せずに猛暑となった場合、北海道、関西、九州の3電力管内で電力不足に陥るとした。
 関電に至っては、「大飯原発を再稼働しても安定供給は困難」(岩根茂樹副社長)との見通しだ。具体的な積算根拠も示さず、いたずらに電力不足を言い立てるのは極めて不誠実だ。再稼働を急ぐ余り、消費者に脅迫観念を植え付けるような電力会社や政府の態度は言語道断だ。
 原発ゼロに伴う発電コストの上昇など、止めるリスクは確かに小さくないが、節電を促す具体的な方策をはじめ、電力各社の供給力にはまだ改善の余地があるとの指摘もある。政府と電力会社は再稼働ありきではない電力の安定供給を真剣に追求することで、何よりも国民の信頼回復を急ぐべきだ。