反原発集会 民意無視の政治に未来なし

 脱原発へ向け、時代が大きな転換点を迎えている。炎天下、東京・代々木公園を埋め尽くす人々のニュース映像を見ての率直な感想だ。

 作家の大江健三郎さんらが呼び掛けた「さようなら原発10万人集会」が16日開かれ、主催者発表で17万人、警備に当たった警視庁によると7万5千人が参加した。
 反原発集会では「過去最大規模(主催者)」という集会は、安全対策をおざなりにしたまま原発再稼働を決めた政治への異議申し立てにほかならない。野田佳彦首相は民意を真摯(しんし)に受け止め、原発からの決別を直ちに表明すべきだ。
 「子どもたちの未来を守りたい」「フクシマと同じ過ちを繰り返してはならない」―。福島第1原発事故を目の当たりにした今、参加者らの訴えは、ごく当たり前の市民感覚に根差したものであり、特別な主張でも何でもない。
 大江さんらは昨年12月にも「さようなら原発」集会を東京・日比谷公園で開いたが、参加者は主催者発表で5500人だった。原発再稼働の“暴挙”を経た今、年齢や性別、政治信条や主義主張などを超えて、反原発のうねりが高まっていることを如実に示した。
 毎週金曜日の夕方に首相官邸前で開かれている数万人規模の反原発デモとも共通するが、注目すべきは、インターネットや報道などで集会を知り、自発的に参加した人々が多数存在することだ。
 記憶に新しいが、中東の民主化運動「アラブの春」は、インターネットの交流サイトを通じて、大きなうねりになった。チュニジア、エジプト、リビアなどで長期独裁政権を打倒した民衆の力を見くびることなど到底できないはずだ。
 しかしながら、野田首相をはじめ民衆の声を受け止めてしかるべき政治の反応はあまりに冷淡に過ぎる。同様に反原発デモなどに距離を置く一部大手メディアの報道姿勢にも疑問を禁じ得ない。
 関西電力大飯原発の原子炉起動を目前にした6月29日には、首相官邸前の路上を抗議の人々が埋めたが、首相は「大きな音だね」と人ごとのように話しただけだった。官邸前の路上デモは60年安保闘争以来の歴史的な出来事とされるが、民意を顧みない首相の鈍感さにあきれる。
 声を上げ始めた国民の変化に背を向けたままの政治に未来などない。民意を無視し続けることは、政治の自殺行為だと自覚すべきだ。