軍事衝突回避 日米中の戦略的対話を

 尖閣諸島を含む東シナ海のトラブル回避に向けて、日本と中国の防衛当局が、ホットライン開設など連絡メカニズムの構築で実質的に合意していたことが分かった。

 自衛隊と中国人民解放軍の艦船、航空機による衝突事故や誤った事実認定が偶発的な軍事衝突につながることを防ぐのが目的という。
 連絡メカニズムの開設を、日中の“不幸な行き違い”を抑止し、いかなる争いも本格的な軍事衝突に発展させないという両国の決意の表れと受け止め、支持したい。
 日本政府の外交・防衛当局には引き続き、国民の生命・財産と中長期的な日本の国益を損なわないよう、冷静かつ多角的な外交・安全保障政策の展開を求めたい。
 中国の空母開発や日本領海付近での中国海軍の活動が活発化する中、日中の衝突回避に向けた取り組みは遅すぎるくらいだ。
 両国の防衛当局は既にホットライン設置のほか、艦船や航空機などの行動の事前通告の方法、通信手段として国際的に広く利用されている周波数の使用などで合意。運用開始の時期を含む最終合意へ向け、作業を着実に進めてほしい。
 尖閣諸島では中国・農業省の漁業監視船や国家海洋局の海洋監視船の領海侵犯が後を絶たない。日本国民の神経を逆なでするような挑発行為は慎んでもらいたい。
 尖閣諸島の領有権や東シナ海のガス田開発をめぐる対立が続く一方で、日中双方で「領土ナショナリズム」も高まっている。こうした中、両国は万が一にも、種々の対立を武力によって決着するという誘惑に駆られてはならない。
 県民は沖縄戦の筆舌に尽くし難い犠牲を通して、軍隊が住民の生命や財産を守らず、戦争が国家を疲弊させたことを学んだ。
 尖閣問題で米国が日本を支援するとかしないとかいう議論がかまびすしいが、石垣市に帰属する尖閣諸島はわが国の領土であり、県民を度外視して尖閣を「火の海にすることも辞さず」といった議論にくみするわけにはいかない。国連憲章に照らしても、あらゆる争いは平和的手段による解決を図るべきだ。
 期待したいのは「日米中戦略対話」だ。野田佳彦首相が海洋や経済をめぐるルールづくりを念頭に米中両国に提案した。日本政府はこれを実現し、戦略的対話を通じて国益と東アジアの平和を両立させる外交の真価を発揮してほしい。