米軍刑法犯起訴 地位協定改定が不可避

 なぜそこまで米国におもねる必要があるのか。国民の人権はここまで無視されてもいいのか。日本政府の対米従属ぶりを証明する事実が、また明らかになった。
 日本平和委員会の調べで、2011年の1年間に国内で発生した米軍関係者による一般刑法犯(自動車による過失致死傷を除く)の起訴率が、わずか13%であることが分かった。日本人も含めた全国の起訴率42%(2010年)に比べ、あまりにも低すぎる実態だ。

 そうなる理由がある。日本政府は、重要な事件以外は裁判権を放棄するという密約を1953年の日米合同委員会刑事部会で米側と交わしている。両政府は否定しているものの、今回の事実は密約が忠実に実行されていることを如実に示している。
 つまり、日本政府が米側のご機嫌をとるため裏で手を握り、被害者である自国民の人権をないがしろにしているということだ。主権国家の体をなしていない。政府は、密約の存在を認め、その撤回に向けて米側と交渉を開始すべきだ。
 この件について、玄葉光一郎外相は「あってはならない。そういう(国内全体との)差はないと承知している」と人ごとのように否定した。事は国家の主権にかかわることなのに、認識不足も甚だしい。
 今回のデータで特に許し難いのは、強姦(ごうかん)・強姦致傷・強制わいせつ事件3件がすべて不起訴となっている点だ。心身ともに傷付けられた被害者にとって、犯人が一切裁きを受けないとなれば、そのショックは計り知れない。被害者の尊厳を徹頭徹尾守ろうとの気概が政府に感じられないのは極めて遺憾だ。
 沖縄では今月18日、強制わいせつ致傷の疑いで21歳の海兵隊員が那覇署に逮捕されている。女性を背後から引き倒し行為に及んだ卑劣な犯罪だ。当然起訴され、日本の裁判で厳正に裁かれるべきだ。国内法に基づいて粛々と起訴できるか、司法当局の判断に注目したい。
 日本政府に圧力をかけ、密約を引き出した米側の姿勢はどうか。「日本の司法は米軍に甘い」との認識が兵士に浸透しているならば、占領者気取りの時代錯誤というほかない。密約の撤回はもちろん、米軍人・軍属に優越的地位を保証する日米地位協定の改定なくして犯罪抑止などおぼつかない。両政府は改定へ行動を起こすべきだ。