水陸両用車導入 専守防衛を捨てるのか

 憲法の平和理念と国是の専守防衛をかなぐり捨てるような動きが続いている。自衛隊に攻撃的装備を導入する計画が突然浮上した。
 防衛省は2013年度予算で、米海兵隊による「殴り込み攻撃」の主軸を担う水陸両用車を陸上自衛隊に導入する方針を固めた。

 海洋進出を強める中国をにらみ、南西諸島防衛に向けた「動的防衛力」を強める狙いがある。自衛隊の攻撃力向上につなげる思惑もうかがえる。
 島しょ防衛の中核と位置付ける陸自西部方面隊普通科連隊(長崎県佐世保市)への配備が想定されている。新年度の予算編成を前に、尖閣、竹島をめぐる中国、韓国との対立を政治利用して、装備拡充を図る危うい動きだ。
 中国を念頭に置いた島しょ防衛強化を掲げて装備を競い合えば、中国側も対抗せざるを得なくなる。
 それで何が生み出されるのか。
 軍備強化が過熱し、東シナ海での不毛な緊張を高める可能性が高くなる。それは日中双方に不利益しか生まない。近視眼的な水陸両用車の導入はやめるべきだ。
 確認しておこう。重機関銃などを備えた水陸両用車は、沖合の強襲揚陸艦や海岸線の基地から出発して敵を攻撃、撃退する装備だ。海岸から上陸し、凹凸のある地形でも戦車のように移動する。
 在沖海兵隊の水陸両用車は、キャンプ・シュワブの海岸などで頻繁に訓練し、国道を横切るなど基地外も通行している。地域住民にとって威圧感が大きい装備だ。
 イラク戦争にも投入され、ファルージャの反米勢力の大量殺りくにも加わった。バリケードの破壊や市街戦での歩兵の盾、前線への物資輸送にも用いられている。
 こうした攻撃性の強い兵器の導入が、国会での議論もなく、自衛隊制服組と防衛官僚が主導し、なし崩し的に進むことがあってはならない。繰り返すが、専守防衛を逸脱している。
 野田政権になってから、平和憲法の理念を軽視する事態が相次いでいる。
 政府は武器輸出三原則を緩和する動きを見せ、原子力基本法改正では「安全保障に資する」と、軍事転用の可能性を示唆した。
 さらに首相は集団的自衛権の行使を禁じた憲法解釈をめぐり、「議論すべきだ」と発言している。
 水陸両用車の導入はこうした危険な流れの一環と見ていい。非民主的で国民不在も甚だしい。



琉球新報