ガザ地区侵攻 即時停戦を最優先せよ


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 イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの武力衝突が激化し緊迫の度合いが高まっている。
 イスラエルのメディアによると、地上軍によるガザ侵攻が現地時間17日夜(日本時間18日未明)にも始まるとの見通しもある。

 イスラエル軍が本格的な地上侵攻に踏み切れば2009年以来だ。衝突が激化するのは必至で、一般市民を含む多数の死傷者が出る可能性が高い。
 ガザ侵攻を回避し直ちに停戦を実現するため、国連や米国をはじめとする関係諸国は、あらゆる外交チャンネルを駆使し、双方への働き掛けを強めてほしい。
 イスラエルとハマスの武力衝突は散発的に続いていたが、イスラエルと国交を持つエジプトが停戦を仲介し、13日までにいったん事態は沈静化していた。
 しかし、イスラエル軍は14日、ガザ地区への大規模な攻撃を電撃的に開始しハマス軍事部門トップのアハメド・ジャバリ氏を暗殺。ハマスは報復攻撃を宣言し、イスラエル最大の商都テルアビブに初めてロケット弾を撃ち込むなど衝突は拡大の一途をたどっている。
 イスラエルの大規模攻撃の背景には、来年1月に総選挙を控えたネタニヤフ首相が、強い指導者を演出したいとの思惑があるとの分析もある。それが事実なら言語道断であり、到底許されない。
 一方、昨年春の「アラブの春」でエジプトのムバラク政権崩壊以降、武器や爆発物がガザ地区へ流入し、イスラエル側が危機感を強めていることも事実だ。
 実際、ハマスのロケット弾の飛距離がこれまで届かなかったテルアビブまで伸び、強い衝撃を与えた。裏返せば、地上軍侵攻など武力による圧力は、過去にないリスクを伴うことに留意すべきだ。
 ハマスによると、14日以降のガザ地区の死者は29人、負傷者は260人に達した。08~09年のガザ侵攻では、一般市民ら千人以上が犠牲になっており、地上軍侵攻で被害が拡大するのは火を見るより明らかだ。
 ハマスはイスラエルの生存権を認めず武装闘争を掲げるが、そうした姿勢を改めない限り、ガザ地区の住民に平和と安寧(あんねい)は訪れることはなく、中東和平の実現など望むべくもないと認識すべきだ。
 報復が報復を呼ぶ「負の連鎖」を一刻も早く断ち切るため、国際社会の英知を結集したい。