預貸率低迷 金融政策より内需喚起を


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 預貸率5割未満の県が3月末時点で全国47都道府県中、25道県に上ることが分かった。企業や個人の資金需要減退、つまりは内需の低迷ぶりを如実に示している。

 政界は日銀への風当たりを強めているが、日銀がいくら量的緩和しようと、内需が乏しい限り、資金は金融機関に滞留しがちなのだ。金融政策で簡単に事態は改善しないことの証明にほかならない。
 金融政策への過度の依存は、景気対策としてはいささか焦点の外れた処方箋ではないか。総選挙で各党は日銀への圧力を競うのでなく、内需を喚起する政策をこそ競ってほしい。
 預金に対する貸出金の比率である預貸率は、数値が高いほど預金が融資に回っていることを示す。3月末時点で青森など5県は40%にも届かなかった。沖縄は58%。最高の大阪でも68%だ。高度成長期は資金需要が旺盛で、大手銀行は軒並み100%を超えていたから、現在の民間需要がいかに冷え込んでいるかが分かる。
 金融機関が貸し倒れを恐れて融資先の選別を進めているとの批判もあるが、貸し倒れを避けるのは金融機関として当然だ。一方的な選別批判は、不良債権を膨らませよと求めるのに近い。むしろ貸し倒れ懸念を上回る内需をつくりだせていないことを省みるべきだ。
 安倍晋三自民党総裁は日銀法改正にまで言及している。日銀総裁の首をすげ替える権限を政治が持つ、という意味であろう。日銀への圧力を高める姿勢を見せ、「無制限の金融緩和」を打ち上げた。
 だが既にゼロ金利は1999年から始まり、解除・再開を繰り返して13年になる、市中金融機関から国債などを買い取る金融緩和措置も91兆円に達しようとしている。いずれも極めて異例の措置だが、これで景気が上向いたという話は寡聞にして聞かない。
 日本政策投資銀行の藻谷浩介氏は著書「デフレの正体」で金融政策による「インフレ誘導」「デフレ退治」は不可能、と述べる。現実を見れば、不可能とは言わないまでも、かなりの困難を伴うのが実態だ。
 内需喚起には、金融資産による所得を貯蓄に回しがちな高齢富裕層から、生活費や子育てで支出の実需がある若い世代に所得移転すべきだ。若者や女性の正規就労増加は一つの解と言える。税制も一策だ。そうした内需喚起策を具体的に講じるのが先決ではないか。