嘉田新党結成へ 脱原発の受け皿は必要だ


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 分かりにくかった争点や対抗軸が整理され、有権者にとってもプラスになるか注視したい。
 衆院選に向け、嘉田由紀子滋賀県知事が原発依存からの脱却を掲げて新党を結成する意向を表明した。新党の「脱原発」「卒原発」の旗印の下に「国民の生活が第一」「みどりの風」などの政党が結集、連携する方向だ。

 国民的関心が高い原発問題で「脱原発」世論の受け皿が形成されて、対抗軸ができることで政策論争が活発化するだろう。原発への対応やエネルギー政策で国民に明確なビジョンを示し、活発な論戦を展開すべきだ。
 嘉田氏や、嘉田氏と連携を図る各党の動きに対しては、原発以外の外交・安全保障、経済、消費税などの政策はどうするのか疑問や批判も出ている。「選挙前の野合だ」(安住淳民主党幹事長代行)との指摘にどう反論するのかも問われる。
 確かに、国政選挙で国民に信を問い、政権を担う覚悟があるのなら、原発以外の政策についても整理する必要があろう。沖縄の基地問題に対しても、明確な方針をいずれは示すべきだ。
 しかし、今回の衆院選は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後初めてだ。原発への対応やエネルギー政策は重要な争点だ。
 政府が今年8月に実施した討論型世論調査では、2030年までに原発比率ゼロを目指す案への支持は46・7%を占め、政府が有力視した「15%案」の15・4%、産業界の一部が推す「20~25%案」の13・0%を大きく上回った。
 エネルギー政策で重視することも76・5%が「安全確保」を選び、「エネルギーの安定供給」「コスト」を上回る。「脱原発」の確固たる世論があるのは明らかだ。
 こうした中で「脱原発」で民主党の本気度には疑問符が付き、日本維新の会は「太陽の党」との合流で姿勢を後退させた。嘉田氏らの動きはこうした風潮に強い危機感を覚えたからにほかならない。「脱原発」の受け皿をつくることは、時代と国民の要請であると受け止めたい。
 「脱原発」新党は民間著名人も含めた幅広い結集を目指すという。しかし、単なる選挙目的ならば、国民の失望は大きいし、支持も広がらない。結集を目指す各党はそのことを肝に銘じ、マニフェスト作りを急いでほしい。国民の眼力もまた問われている。