「ミサイル」予告 許されない無謀な実験


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 北朝鮮が「地球観測衛星」を今月中旬にも北西部の「西海衛星発射場」から打ち上げる計画を発表した。国際社会は事実上の長距離弾道ミサイル発射実験と見ている。
 強行すれば、北朝鮮は国際社会の非難を浴び孤立を深めるだろう。各国の制裁も助長し経済や市民生活にもマイナスだ。実験は無謀であり、思いとどまるべきだ。

 北朝鮮は4月にも「事実上の長距離弾道ミサイルの発射」とされる衛星打ち上げを行った。実験は失敗したが、国連安全保障理事会が発射を強く非難する議長声明を採択。15の理事国すべてが「弾道ミサイル技術を用いたいかなる発射行為も禁じる安保理決議に違反する」と認識していた。北朝鮮は一連の国連決議を真摯(しんし)に受け止め、今度こそ発射を中止すべきだ。
 今回の発射計画については、昨年末に死去した金正日総書記の「遺訓」、日本の衆院選や韓国大統領選へのけん制、オバマ米政権との公式対話再開に向けた足場固め―などの観測が流れている。
 発射実験の狙いが何であろうと、これにより安全を脅かされる近隣諸国にとっては迷惑千万な話だ。
 4月の実験の際には沖縄付近にミサイルの破片落下の可能性があるとして、自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が県内に配備された。軍事専門家はミサイルの航跡を高速で計算して迎撃するPAC3で、軌道を予測しがたい破片を打ち落とすのは不可能と指摘していた。しかし、こうした声はかき消され「合理的説明を超えた大げさな対応」(元官房副長官補の柳沢協二氏)がまかり通ってしまった。同じようなことが繰り返されてならない。
 金正日氏の後継者である金正恩第1書記は「先軍政治」で肥大化した軍の力を弱め、市民生活の向上を図る経済運営に注力していると期待する向きもある。しかし、発射を強行すれば、「結局は軍事優先」という評価しか残らない。
 金正恩氏は「先軍政治」や核開発技術を外交の駆け引きに使う「瀬戸際外交」を見直し、国際社会との協調路線にかじを切るべきだ。
 北朝鮮は06年と09年のミサイル発射後、核実験を行い世界の非難を浴びた。4月の声明は3度目の核実験への警告でもあった。北朝鮮が平和と自国民の平穏な生活を望むなら、核開発に時間と労力を費やしている場合ではなかろう。