12衆院選 経済政策/産業・雇用の再生策明示を


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 長引くデフレ、円高、巨額の政府債務、格差拡大など「失われた20年」の間に積もり積もった難題をいかに克服し、日本経済を再生させるか。衆院選で各政党に実効ある経済政策が求められる。

 自民はデフレ脱却策として、日銀による大胆な金融緩和と公共事業の復活を掲げる。公共事業に充てる建設国債を増発し、発行額の範囲で日銀に市場で国債を買わせることを視野に入れている。
 民主は、自民の金融、財政政策は政府の財政赤字を日銀に穴埋めしてもらうもので「邪道、禁じ手だ」と指摘し、公共事業拡大についても「一時しのぎで借金を付け回す安易な対応」と批判している。
 主要政党は、デフレ脱却に向け、日銀に踏み込んだ金融緩和策を求めているが、日銀の独立性を脅かすような過度な要求は禁物だ。
 各党は政治の役割をこそ、まず果たしてもらいたい。公共事業は、拡充の是非という「量」だけが問題ではない。波及効果そっちのけの旧来型の事業ではなく、環境や安全・安心に配慮した人に優しい事業か否か、「質」が問われよう。
 7~9月期の国内総生産(GDP)は3四半期(9カ月)ぶりにマイナス成長となり、日本経済の景気後退が鮮明になっている。各党は、即効性のある経済対策を国民に目に見える形で示しているか。
 時代が求めるのは、疲弊した日本の社会経済を生身の人間を中心に据えて立て直すこと、そのための骨太な処方箋を短中長期の時間軸を設定し描くことだと考えるが、各党の公約からはそうした展望や意気込みが十分伝わってこない。
 景気浮揚で肝心なのは、内需の喚起だろう。そのためにも格差社会にメスを入れ若者や女性の正規就労を広げていく具体策が不可欠だ。雇用と経済の再生は、コインの表裏の関係にあると心したい。
 中長期的には、国際競争力を高める産業政策や、再生可能エネルギー分野など技術革新を誘発する新産業の創出が必要だ。各党はこうした政策こそ競い合ってほしい。
 野田政権は、成長が期待される分野で100兆円超の新市場と、480万人の新規雇用創出などをうたった「日本再生戦略」(原案)を決めたが、政治が混乱し国民論議はほとんど進んでいない。
 経済戦略の具体化が先送りされ、デフレを事実上放置する政治の不作為は、もう終止符を打つべきだ。