米銃乱射事件 所持禁止の法制定急げ


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 このままでは悲劇は何度も繰り返されるだろう。米東部コネティカット州の小学校で子ども20人を含む26人が死亡する銃乱射事件が起きた。使われた銃は容疑者の母親が合法的に所持していたものだ。多くの子どもが無抵抗のまま銃弾に倒れるという理不尽な事態を引き起こした原因は、一般市民に広く浸透している銃所持に寛容な米国社会そのものだ。

 2007年の国連統計によれば米国には短銃などの小型武器が約2億7千万丁あり、市民100人当たりの所持率は88・8人で、世界1位だ。銃犯罪による死者は年間1万人前後で、銃規制団体の推計では自殺や事故を含めれば年間約3万2千人が銃で命を落としている。異常としかいえない。
 それにもかかわらず米国内で銃規制を求める声は広がらない。ギャラップ社調査では銃販売の規制強化を求める声は1990年には78%だったが、2010年には44%まで減少し、規制緩和・現状維持派が54%と10ポイント上回っている。
 米国では憲法修正2条で「武装の権利」がうたわれており、米国民の銃所持が保障されている。開拓時代から続く「自分の身は自分で守る」という精神が根強く残っており、銃乱射事件が起きた後も住民から「(被害者側が)銃を持っていれば反撃できた」という声が聞こえたりする。銃所持が禁じられている日本からすると、こうした風土はなかなか理解できない。
 米国内では1970年代から銃による殺人事件が増えたため、93年には銃販売店に購入者の身元調査を定め、重罪前科者らに販売を禁止する法律が制定された。さらに94年には自動小銃などの製造と新規所有を禁じる時限立法も制定されたが2004年に失効した。
 銃規制が進まない理由はほかにもある。銃規制を求める声が出るたびに有力ロビー団体の全米ライフル協会が反対の圧力を政界にかけているためだ。協会は一方的に命を奪われた子どもたちにも銃を持って「反撃しろ」と言えるのか。
 オバマ米大統領は事件を受け、失効した自動小銃禁止法の再発効などに取り組む姿勢だ。ニューヨークのブルームバーグ市長も「違法銃器に反対する市長の会」を設立して銃規制に動いている。子どもの犠牲を無駄にしないためにも銃所持そのものを禁止する法制定を急ぐ必要がある。そして米国民は銃に寛容な社会から今こそ脱却すべきだ。