憲法問題新政権 9条形骸化の改憲は論外

 衆院選の重要な争点となっていた憲法改定が、自民党の圧勝によってより現実味を帯び始めた。

 安倍晋三自民党総裁は17日の会見で、憲法を改正しやくするよう発議の要件を定めた憲法96条を改定することに関し、日本維新の会とみんなの党との連携を模索していく考えを示した。日本維新の会は、自民党が提案した場合は「賛成する」としている。
 安倍総裁は会見では憲法96条の改定のみに言及しているが、本丸は「戦争放棄」をうたった9条を含む本格改定だろう。これを衆院選圧勝の余勢を駆って一気に推し進めようとの腹づもりなら、無謀だ。
 自民党の勝因は、民主党の失政と多党乱立とも言われる。憲法改定の国民論議は深まっておらず、国論を二分する「改憲」の取り扱いは慎重を期すべきだ。
 憲法96条は、憲法改定には衆参両院とも総員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、承認には「国民投票で過半数の賛成が必要」と規定している。いわば、安易に憲法改定ができないよう関門の役割を果たしてきた条項だ。
 発議要件が厳しいから手始めに96条から改正しようとの連携表明は、あまりに短絡的で国民をないがしろにしていないか。すぐに賛意を示した日本維新の会も同様だ。
 衆院選で自民党は、自衛隊を「国防軍」とし、集団的自衛権の発動を可能とする「国家安全保障基本法」の制定を公約に掲げた。
 集団的自衛権の行使は許されないとする憲法解釈は、政府が長年積み重ねてきたものだ。それを変更し、憲法そのものを形骸化させかねない同法の制定は危険そのものだ。今後そうした法制化の動きも注視していく必要がある。
 一方で連立を組む公明党は憲法9条を堅持した上での「加憲」の立場だ。ぜひその姿勢を貫き、自民党に自制を促してもらいたい。
 「タカ派」の安倍新政権の誕生に対し、中国、韓国をはじめ、諸外国も警戒を強めている。憲法改定の動きは、領土問題の平和的解決をさらに遠ざけるものでしかない。
 国民に刻み込まれた戦争放棄と恒久平和への思いは、平和国家として歩んできた戦後日本の掛け替えのない財産だ。それを葬るような改憲は論外だ。国の根幹に関わる改憲を、国民論議もなく、数の力で押し切ることは決してあってはならない。