ノロウイルス 手洗い徹底し感染予防を


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 大流行を警戒していた最中、とうとう死者が出た。宮崎県の医療法人春光会東病院でノロウイルスによる感染性胃腸炎の集団感染が発生、入院患者や職員計44人が下痢や嘔吐(おうと)の症状を訴え、入院中の78~88歳の男性患者6人が22日までに亡くなった。

 厚生労働省は、ノロウイルスとみられる感染性胃腸炎の全国の患者数が過去10年で最多だった2006年に迫る勢いで増えているとして、国民に注意を喚起していた。
 集団感染は決して「対岸の火事」ではない。県内の自治体、医療機関も感染の予防・拡大阻止へ万全の備えをしてほしい。
 同病院では78歳の患者が12日に嘔吐と発熱の症状を示し、14日に死亡。17日から22日まで死亡が相次いだ。死因は全員、嘔吐物が気管に逆流して肺炎を引き起こしたと診断された。
 病院側がノロウイルスを疑い、患者5人の簡易検査を行ったのは17日。最初の死亡者を出してから3日後だった。県への死亡報告はさらに22日と遅れた。
 職員が患者の嘔吐物の処理する際使う前掛けは使い捨てするように―と行政指導があったにもかかわらず、病院側は同じ患者に同じ前掛けを一日中使い回したという。ずさんな医療行為で感染が拡大し、命が失われたことは極めて残念だ。病院側の責任は重大だ。
 各家庭、職場も感染への警戒を怠ってはならない。「自分は大丈夫」との油断は禁物。十分知識を身に付け、感染予防に努めてほしい。
 ノロウイルスの感染力は極めて強い。生がきなど貝類からの感染が知られ、ほとんどの場合、ウイルスは口から体内に入る。感染者の吐いた物からも広がる。症状は嘔吐や下痢、腹痛など。子どもや高齢者で重症化する例が多い。
 厄介なのは、ウイルスの増殖を抑える薬や有効なワクチンがないことだ。治療は整腸剤や痛み止め投与など対症療法に限られる。
 一人一人が感染防止で細心の注意を払ってほしい。帰宅後やトイレ利用後、食事前などに、小まめな手洗いを心掛けたい。タオルの共用は避けた方がよい。感染者の嘔吐物の処理は、希釈した塩素系漂白剤に浸したペーパータオルなどで拭き取るのが有効という。
 繰り返しになるが、各自が自治体や病院、報道機関などが発信する情報を活用し身を守ってほしい。