告訴取り下げ提示 泣き寝入り促すも同然だ


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 義父が女児に性的暴行を加えて告訴され、一審で有罪判決を受けた事件で、この事件を当初担当した那覇地方検察庁の検察官が被害者家族に対し、告訴を取り下げるよう求めていたことが分かった。

 告訴取り下げを促す説得の中で、検察官は裁判による二次被害の可能性と、物的証拠が乏しい中で「検察は(裁判で)99・9%勝てるものしか起訴しない」と発言したという。
 人権への配慮なのか、検察の身勝手な都合なのか。いずれにしても被害者側の検察不信を招く不適切な対応と言わざるを得ない。
 検察は、相当な勇気と覚悟をもって告訴した被害者側に泣き寝入りを促したも同然だ。被害者に「二次被害」を与えたとの自覚はあるのだろうか。
 今回の件について那覇地検は「個別の事案」として取材への回答を拒んでいるが、被害者側に対し丁寧に説明する責任がある。
 裁判による二次被害防止は、別室からのモニター参加など既にいろいろな手段が採用されており、工夫は十分可能なはずだ。
 内閣府の2011年度調査では、性犯罪に遭った女性のうち家族も含め相談したことがあるのは3割弱だった。告訴へのためらいは推して知るべしであり、そのわずかな訴えに真摯(しんし)に向き合わねば逆に性犯罪を助長しかねない。
 裁判で99・9%勝てるものしか起訴しないというのは、検察官の保身としか映らない。保身を優先させ、結果的に告訴する権利を被害者から奪うことは本末転倒だ。
 検察統計によると、全国の強姦罪の起訴率は10年前から約18ポイント落ち、11年は47・9%にとどまった。近年、性犯罪の裁判で無罪判決が続き、その影響として被害者への告訴取り下げ圧力が増しているとみる専門家もいる。泣き寝入りする被害者を減らすために、その検証も欠かせない。
 性犯罪被害の相談から支援まで1カ所で行うワンストップ支援センター設立の機運が県内でも高まっている。専門機関として医療機関、警察なども関わる必要があり、徹底的な当事者視点で取り組む必要がある。
 「あなたは一人じゃない」。支援センターに求められるのは、そんな心が形となる安心感であり、それが被害者の心の傷を癒やすことにもなる。検察も被害者の人権に十分配慮した上で、性犯罪に厳正に対処してもらいたい。