野戦訓練場建設 海兵隊駐留の根拠崩れた


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 米海兵隊が世界で唯一、沖縄の北部訓練場に設けているジャングル戦闘訓練センター(JWTC)を米本土近くに建設することを検討している。
 20万人に及ぶ米海兵隊のJWTCが、日本、韓国など、アジア・太平洋地域の米国の同盟国の総面積のわずか0・025%しかない沖縄に設けられている。あまりに異常な基地機能の集中である。

 米本国から送り込まれる海兵隊員も訓練しており、海兵隊は、本国からの派遣費抑制を意図している。国家財政難に伴い、国防費の大幅削減を迫られた軍部の身勝手な論理ではあるが、米本国や米領の島々で広大な適地がいくらでも探せるはずだ。
 沖縄派遣がなくなれば、訓練頻度は大幅に下がる。米軍再編で実戦部隊が確実に減る在沖海兵隊の訓練を逆に新たな訓練場で実施すればよい。在沖海兵隊の全面撤退を求める好機到来と捉えたい。
 テロ勢力との戦いをにらみ、海兵隊が重視するジャングル戦闘訓練が沖縄で縮小されることは、沖縄が軍事戦略上の要であるという論拠の乏しさを裏付ける。
 海兵隊は1998年、北部訓練場の名称をJWTCに改めた。99年にパナマ運河の使用権が米国から返還されたことで、パナマの訓練場が閉鎖され、沖縄に移った。
 年平均約6千人の兵士が、4、5人単位で地図などを頼りに、敵の追跡や脱出など、ジャングルでの戦闘訓練を実施している。
 海兵隊は地上戦闘兵力、航空戦闘兵力、役務支援が一体で機能するとされてきた。航空と役務支援は地上部隊を支援するのであり、主力はあくまで地上戦闘能力だ。
 昨年4月に米軍再編見直しの日米合意は、在沖海兵隊の主力歩兵部隊・第4海兵連隊のグアム移転を盛り込んだ。地上兵力にぽっかり穴が開き、垂直離着陸機MV22オスプレイが運ぶ歩兵の中核がいなくなる。日米政府が沖縄に基地を置く論拠にする「抑止力」の虚構が浮かぶ。
 軍事戦略上、海兵隊は大規模な戦争・紛争の開戦前に主として米本土から送り込まれてきた。ベトナム戦争後、1983年のグレナダ侵攻、90年の湾岸戦争、2001年からのアフガニスタン・イラク戦争などをみても、戦場近くに海兵隊の常駐基地はない。
 海兵隊は臨機応変な機動力を持つ。沖縄に居座り、JWTCを運用する必要性は乏しくなっている。