経済再生本部始動 「先祖返り」戒め立て直せ


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 安倍晋三首相を本部長に全閣僚が参加する「日本経済再生本部」が初会合を開き、本格始動した。停滞した経済を官邸主導で立て直す司令塔の役割を担うが、公共事業を中心とした大規模な財政出動を前面に打ち出した姿勢には借金増大の危うさも付きまとう。首相の舵(かじ)取りが一層重要になる。

 会合では10兆3千億円の緊急経済対策の骨子を確認したが、地方や民間の負担分を加えた事業規模は20兆円を超える見通しだ。柱となる公共事業には約5兆円を計上。財源不足を補うため、5兆2千億円の建設国債を追加発行する。2012年度中に発行する国債は50兆円規模に膨らむ。まさに大判振る舞いだ。
 「縮小均衡の分配政策」から「成長と富の創出の好循環」への転換を目標に掲げた。民主党政権との違いを示したい思惑もあるのだろうが、財政規律は維持できるのか、強い懸念も残る。
 「先祖返り」は戒めるべきだ。1991年のバブル経済崩壊後、自公政権は公共事業を柱とした経済対策を打ち出したが、期待された効果を上げられなかった。今回はその二の舞にならないようきちんと教訓を生かさなければ、国民の支持と期待は急速にしぼむということを忘れてはならない。
 民主党政権時代に休眠状態だった「経済財政諮問会議」も、きょう3年半ぶりに再開する。こちらも安倍首相が議長を務め、麻生太郎財務相と甘利明経済再生担当相のほか民間からも参加する。
 再生本部と諮問会議は車の両輪となるが、国民にはその役割分担が分かりにくく、うまく連携できるのか不安も拭えない。
 小泉政権時代は諮問会議が主導権を握り、構造改革や財政再建に取り組んだ。しかし一方で、この構造改革路線が非正規雇用を増大させ格差社会の拡大を招いた側面も指摘されている。
 こうした反省も踏まえ、両輪を効果的に動かさなければ、経済再生の足取りは確かなものにはならない。
 日銀との連携もより重要になる。大胆な金融緩和で、物価上昇目標を設定してデフレ脱却を図る戦略だ。しかし、物価だけが上がり勤労者の所得が低いままでは、内需の喚起はおぼつかない。
 今春闘に向けて労組側の賃上げ要求を直視するとともに、経営側に対して勤労者・中間層支援にしっかり取り組むよう促すべきだ。