緊急経済対策 本当に必要な事業なのか


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 大盤振る舞いが禍根を残さないか、不安を禁じ得ない。政府が事業費規模で20兆円に上る緊急経済対策を閣議決定した。国の支出、いわゆる「真水」だけでも10兆円余に達する規模だ。

 本当に必要な事業だけなのか、疑問がある。政府は公共事業に過度に依存せず、真に内需拡大につながる政策を追求すべきだ。
 今回の対策は公共事業を5兆円超上積みして復興・防災対策、インフラ整備などに充てる。政府は国内総生産を約2%押し上げ、60万人の雇用創出につながると見込む。
 半面、新規国債発行額を44兆円以下に抑えるという民主党政権の取り決めは取り払われ、国債発行額は約50兆円にまで膨張する。前政権の公共事業抑制路線は、完全に財政拡大路線に転換した。
 これで景気浮揚につながるか、疑問は残る。バブル経済崩壊後も政府は真水で10兆円を超える景気対策を打ってきた。効果が乏しかったのは歴然とした事実だ。
 そもそも、基礎的なインフラ整備が一通り終わった成熟した先進国では、公共事業の経済波及効果は小さくなる、というのが公共事業削減論の背景にあった。その前提条件は今も変わらないはずだ。だからこそ経済対策としての公共事業膨張に疑問が湧くのだ。政府・自民党は本当に必要性の議論を尽くしたのか。
 自民党の各部会での議論は7~9日のわずか3日間だった。どさくさに紛れ、各省庁が自民党の族議員と組んで事業要求を膨らませたという印象だ。「古い自民党政治」が復活した感は否めない。
 確かに、高度成長期に造られて老朽化したトンネルなど、危険な構築物は多い。財政投資の費用対効果を高める意味でも、後世に残す借金を減らすためにも、安全上、緊急性の高いこれらの更新投資に絞り込んだ方がよい。
 必要なのは見た目の成長率上昇でなく、内需拡大だ。資金が投機に回るのではなく消費に回ることこそ、景気の実感につながる。必然的に、子育て世代などモノやサービスへの需要の高い若年層に所得を移転することが処方箋(しょほうせん)となろう。
 その意味で、今回の対策の中にある「雇用・給与を拡大するための税制」「祖父母からの教育資金に対する贈与税の非課税措置」は歓迎したい。こうした内需拡大策をこそ、数多く組み込むべきだ。