公室長訪米 米国は民主主義国なのか


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 何をもって「最善」とするのかまるで分からない。根拠を何一つ示さず、結論だけを繰り返すのはその結論が合理的でも「最善」でもないからだろう。自ら論理性を欠くと白状するようなものだ。

 訪米中の又吉進知事公室長と面会したナッパー国務省日本部長、ジョンストン国防総省北東アジア部長らは米軍普天間飛行場の移設先について「現在の日米合意が最善」と、あくまで名護市辺野古への現行移設計画にすがりつく姿勢を示した。
 辺野古移設に合理性が乏しく、道義的な正しさに至ってはかけらもないのは、米国自身がよく分かっているだろう。米国は時に、世界の人権侵害国を非難し、非民主主義国に民主主義を促すが、自身は民主主義国なのか。論理的首尾一貫性を保ちたいなら、県内移設を撤回すべきだ。
 又吉氏は地元名護市の反対、県議会の全会一致の反対決議などを挙げて「辺野古移設は事実上不可能だ」と強調した。沖縄の意見に民主主義的正統性があることの根拠を明確に示している。
 又吉氏はまた「反米や反基地で感情的に反対しているのではない」とも述べた。沖縄の意見を「感情論」と見なしがちな日本国内や米国内の空気への反論だ。
 誰が聞いても、米側の「最善」発言より県の方が論理的だろう。
 県が、自民党の政権奪還直後に訪米し、県外移設を求める立場に変化がないと訴えたのは意義がある。時間がたてば、知事は受け入れに変わりつつあるといった誤解を増幅しかねなかったからだ。その意味で今回の訪米を支持したい。
 これに対し、日本の政権の何と情けないことか。安倍晋三氏は総選挙直後、「辺野古移設の方向で地元の理解を得る努力をしたい」と述べた。県内の自民党候補全員が「県外移設」を主張して当選したのに、である。
 首相就任直前の発言だが、沖縄には民主主義を適用せず、沖縄の民意はくみ取る必要がないと言うに等しい。
 だが、沖縄があきらめる必要はない。米紙ニューヨーク・タイムズは社説で「沖縄の正当な懸念にもっと敏感に反応すべきだ」と米政府を批判し、在沖米軍の県外移転を唱えている。国際世論に照らしても沖縄の論理に分があることが分かる。国際社会に粘り強く働きかけ、日米両政府の非人道性・不当性を明らかにしていきたい。