無投票当選 選挙介した論戦で活力を


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 宮古島市長選挙は現職の下地敏彦氏以外に立候補者がなく、無投票で再選が決まった。
 下地氏は、前市政で相次いだ不祥事を受けて職員の意識改革を進め、市の行財政改革を目に見える形で進めた。政党や地元の団体から多くの推薦を得るなど、早くから盤石の選挙態勢を構築し、野党側の候補者擁立に大きく先行した。

 当選の弁で、下地氏は「(無投票は)むしろ選挙戦よりも責任が重い」と語った。その通りである。無投票再選に決しておごらず、市民本位の市政運営を貫いてもらいたい。
 気になるのは、宮古島市は昨年6月の県議会議員選挙でも無投票だったことだ。糸満、南城の両市区も無投票だった。南城は市町村合併以来、県議選は連続して無投票になっている。
 沖縄の政治風土は、全国的にも少ない保守、革新の対決構図が残る。地域によっては保守系同士、革新系同士が政策論争を深め、将来を見据えた活発な議論が有権者を巻き込んで展開される。その延長線上にある首長選が無投票に終わることはほとんどなかった。
 宮古島市のようなケースが相次げば、投票する権利を奪われた住民の自治への参画意識に陰りが出かねない。それだけに、市長選で候補者擁立にこぎ着けられなかった革新系野党勢力の責任は重い。
 選挙は民主主義を機能させる土台である。地域特有の課題だけでなく、子育て世代の親、失業にあえぐ人、老後に不安を抱えるお年寄りなど、選挙によって有権者の生の声を吸い上げ、政策に反映させるプロセスは極めて重要だ。
 無投票が、地域をどう発展させるかという政策論争や市民参加に、マイナスに作用してはならない。
 2010年の参院選沖縄選挙区で、全国最低の投票率(52・4%)を記録するなど、政治不信増大と反比例するかのように主要選挙の投票率が低落傾向にある。これは無投票の選挙が増えたことと無縁ではあるまい。
 2005年に平良市と郡部の城辺、伊良部、下地、上野の4町村が合併し、宮古島市が発足した。
 学校統廃合や中心市街地と旧町村部で目立つ地域間格差の是正、防衛省が虎視眈々(たんたん)と狙う下地島空港の軍事拠点化などにどう対処するかなど、市政の課題は多い。
 市長選無投票を逆にばねとして生かし、住民の政治参加を高める宮古島流の改革の成果を見たい。