物価目標明記 経済再生は内需拡大で


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 果たして日本経済はデフレから脱却し、再生を果たせるのか。「アベノミクス」の3本の矢の一つ「金融政策」がいよいよ走りだす。

 政府と日銀が締結を検討している合意文書で、物価上昇率2%の目標が明記される。21日と22日の金融政策決定会合で、文書の内容を協議し最終決定する予定だ。
 金融緩和の強化を訴えて衆院選に圧勝した安倍晋三首相の求めに、日銀が押し込まれたのが実態ではないか。いずれにせよ両者が足並みをそろえ、デフレ脱却に向けた政策を共に推し進める姿勢を強く打ち出したことは、日本経済にとって一つの転機となろう。
 ただ、ここで留意したいのは、物価目標を取り入れるのは、あくまでも手段であるということだ。真の目標は景気を良くすることである。数値にとらわれ過ぎて、目標を見失うとすれば本末転倒だ。他の政策と融合させ、適度な物価上昇で内需を拡大させることが国民の求める景気回復だということを忘れてはならない。
 日銀の独立性を保つため、拘束力を伴う政策協定(アコード)の締結は見送られた。目標の達成時期も明示せず、金融緩和の具体的な手法は日銀の判断に任せるという。
 妥当な判断だろう。過剰に政府に追随する中央銀行が、国際社会から信用を得られるはずもない。両者が対等かつ密接に連携して初めて、効果的な金融政策が実現できるといえよう。
 ただ、日銀の金融緩和の手段は、国債などの資産購入が主になる。そこで問題となるのが、日銀が財政の肩代わりをしているとみなされることだ。
 つまり、国債を買うことで財政規律が緩み、信用を失った国債は売られ、金利が上昇する。それが深刻化すなれば、国家の破綻という最悪の事態となりかねない。
 先の民主党政権でも、安倍政権が今回検討している文書と似たような「共同文書」を結んだ。ただ政府が約束した成長戦略などの実現性が疑われ、金融市場の反応は薄かった。
 日銀は目標の達成が見通せるようになるまで強力な金融緩和を続ける見通しだ。だからと言って、安倍政権は経済再生の責任を日銀に押し付けてはならない。政府に求められているのは、国民も納得するような成長戦略を着実に実行し、経済再生を貫徹することであると肝に銘じてほしい。