一般教書演説 基地・外交の置き去り困る


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 オバマ米大統領が2期目で初の一般教書演説を行った。現在6万6千人のアフガニスタン駐留米軍をこの1年で半減させると表明し、内政では雇用創出と中間層の再活性化が最重要と強調した。アジア市場での公平な競争条件確保に向け「環太平洋連携協定(TPP)交渉を妥結させる」と述べた。

 アフガン問題やイラク戦争で疲弊した米国の経済、財政、市民生活の再生へ向け、内政を重視するのは理解できる。半面、在沖基地問題に触れていないのは不満だ。
 オバマ氏は「米経済成長の真の原動力」として中間層重視を鮮明にし、雇用を増やし労働者の質を高めると強調。「大きな政府ではなく、優先順位を持ち幅広い成長に投資する聡明(そうめい)な政府が必要」とも述べた。方向性はうなずける。
 ただし、米国は内政を優先するあまり、対外関係を二の次にする独善に陥ってはならない。中間層再生による格差是正は世界的課題だ。
 米国に二つの注文をしたい。一つ目。国防費削減の付けを他国に一方的に押し付けてはならない。
 日米関係への県民の信頼を回復するには、在沖米軍削減による過重負担解消が急務だ。そんな折、米国がもし財政再建や震災復興に苦しむ日本側に「思いやり予算」増額を求めるなら筋が通らない。
 普天間飛行場の名護市辺野古移設とオスプレイの沖縄配備の問題については、オバマ氏の存在感が感じられない。日米関係の劇的改善のためにも指導力を期待したい。
 二つ目は、排他的な経済政策は禁物だという点だ。TPP締結へ向け米国基準を押し付けたり、国内総生産(GDP)世界2位の中国を排除したりしては、自由貿易とは名ばかりで時代遅れの「経済ブロック」とのそしりを免れない。
 オバマ氏は米中日の戦略的互恵関係を強化し、アジア太平洋諸国も納得し得る持続可能な自由貿易協定の創設にこそ注力してほしい。
 今回は、北朝鮮の核実験直後とあって、その「挑発行為」を非難し、「世界を率い、これらの脅威に対応した断固たる行動を取る」との決意も示した。
 自らが提唱した「核兵器なき世界」ではこれまでロシアと新戦略兵器削減条約(新START)に調印し、配備戦略核弾頭数を核軍縮史上で最低水準の1550にそれぞれ制限する実績を残した。今後、核廃絶をどう進めるのか。オバマ氏はこれからが正念場だ。